降り積もる雪と眠る男

先日の日曜日、ふと図書館に行きたくなって、お昼過ぎに鎌倉市の中央図書館へ行ってみることにしました。

横須賀線に乗って、鎌倉駅で降りて、西口から御成小学校の方へ。学校を通り過ぎ、細い路地に入って、少し歩いたところに中央図書館はありました。

中央図書館とは言っても、とても小さな古い図書館。しかし日曜日だったこともあり、館内はそれなりに人で賑わっていました。

考えてみると、図書館という空間に足を踏み入れること自体がとても久しぶり。

本好きな人たちのたたずまいに、ゆっくりと流れる時間が重なって、図書館ってこんなに癒される空間だったんだということを再認識。

しばらくはぶらぶらと棚を見ていて、何となく立ち止まったのが詩集のコーナー。

鎌倉にも縁のある詩人・田村隆一さんの詩集を読んで、午後の時間を過ごすことにしました。

これまでほとんど読んだことはなかったのですが、この日の気分にはぴったりで、いつのまにか詩の世界に引き込まれていきます。

何冊か読んで、その日一番印象に残ったのが、詩集『新世界より』のこんな一篇。

新しい雪の中の肉体

古い雪が消えて

新しい雪がふりはじめるまで

おれは枯葉のベッドで眠っているふりをする

死んだふりをしているのは

さすがに飽きた

ほんものの死者が年ごとに増えてくると

骨の思い出だけで日が暮れる

死せる者は幸せだ いつまでたっても

歳をとらない

おれが嫉妬にかられるのは

そんな時だけ

降り積もる雪と眠る男。

真夏の一日に、そんな季節外れのイメージが頭の中を通り過ぎてゆきます。

「死んだふりをしているのは さすがに飽きた」そんな言葉をリフレインしながら、図書館を後にし、近くのカフェでコーヒーを飲むことにしました。