『珈琲とエクレアと詩人』橋口幸子著
『珈琲とエクレアと詩人 スケッチ・北村太郎』という本を読みました。
北村太郎は田村隆一や鮎川信夫などと並ぶ、荒地派の詩人の一人です。
本書はその北村太郎と交流のあった著者による、詩人の晩年の生活の記録。
北村太郎という人について特に知識があった訳ではなく、ふとしたきっかけで手に取ったに過ぎないのですが、読み進めるにつれて、その人となりにすっかり魅了されてしまいました。
晩年の北村太郎は勤めていた朝日新聞社を退職し、鎌倉や横浜のアパートを転々とします。慎ましい暮らしの中で、身の回りの人とたわいのない話をしたり、翻訳の仕事をしたり、猫をかわいがったり。
市井の片隅で人が生きていくその息づかい。一日一日のいとおしさのようなものが静かに伝わってきます。
「校正の仕事、わたしに向かないと思うんですよね」とある日わたしは、自分に自信のないことを訴えた。
「自分に向いていると思って、校正の仕事をしているひとこそ向いていないと思うよ」
著者と詩人のさりげない会話や気持ちのやりとりの中に、大げさに言えば、生きていく意味のようなものが透けて見えたり。
本は100ページ少々ですぐに読めてしまうのですが、何度でも繰り返し読みたくなる素敵な一冊です。
また巻頭に引用された「天気図」という詩がとても印象的。
夜中に台所でネギを切っていたら、そのあまりの白さに誰もいない後ろを振り返ってしまうという内容。
本書の次にはぜひ詩集を読んでみたいと思いました。
珈琲とエクレアと詩人 スケッチ・北村太郎
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橋口 幸子
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