「左右」という言葉を使わずに車のナビをする方法 − アボリジニの言語より
例えば、友人とドライブを楽しんでいるとき、
助手席のあなたは運転している友人に次のように言うかもしれません。
「えーと、次の信号を左ね。」
ここでちょっと想像してもらいたいのですが、もし日本語に「左右」という語彙がなかったとしたら、あなたはいったいどのようにナビをするでしょう?
??
これはなかなかの難題ですが、この広い世界には実際に「左右」という語彙を持たない言語もあるのだそうです。
その例であるオーストラリアの先住民族アボリジニのいくつかの言語においては「左右」の代わりに「西東」という方位の語彙を用いるのだとか。
改めて考えてみると「左右」というのは話し手の向きによって変動する相対的な位置表現であるのに対して、「西東」というのは話し手の向きによって変動しない絶対的な位置表現です。
日本語や英語を含む世界のほとんどの言語は、この相対的な表現と絶対的な表現を文脈によって使い分けています。
しかしアボリジニの言語においては、多くの言語において相対的な表現を使うような身の回りのことに対しても常に絶対的な表現を用いるのだそう。
つまり、日本語なら、
「えーと、次の信号を左ね。」
と言うところ、前述のアボリジニの言語においては、車が北に向かっているときには、
「えーと、次の信号を西ね。」
と言わなければなりませんし、車が南に向かっているときには、
「えーと、次の信号を東ね。」
と言わなければなりません。
こういうフレーズがぱっと口から出てくるというのは、日常生活の中で常に方位を意識しているのでしょうか? あるいは意識しなくても経験によって方位の感覚が身に付いているのでしょうか? おそらくは後者なのでしょう。
ちょっと気になるのは、車が南東に向かっているときには、
「えーと、次の信号を北東ね。」
となどと言えるのでしょうか? もしそんなことができるのなら人間の潜在能力というのは本当にすごいものだと思います。