「天地無用」の意味を考える

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荷物を運搬する際、「上下を逆さまにしないように」という意味で次のような表現が使われることがあります。

てんちむよう【天地無用】

荷物・貨物などに記す「上下を逆さまにするな」という意味の注意書き。

「新明解国語辞典 第七版」

どうもこの表現には違和感があるなと思っていたので、その理由を考えてみました。

そもそも私たちの日常で無用という言葉は「必要ない」という意味で使われることが多いように思います。

例えば、心配無用なら「心配する必要はない」、問答無用なら「話し合う必要はない」という意味ですね。

これらの表現と同じように無用という言葉を解釈すれば、天地無用も「上下を気にする必要はない」という実際とは逆の意味になってしまいます。

それでは天地無用は、なぜ現在のような意味になったのでしょう?

『広辞苑』で無用という単語を引くと、次のような意味がのっています。

むよう【無用】

  1. 役に立たないこと。必要でないこと。「ーな食器」「心配ー」
  2. してはならないこと。「天地ー」「口外ー」
  3. 用事がないこと。「ーの者入るべからず」

「広辞苑 第五版」

こうして見ると天地無用の無用というのは、口外無用の無用などと同じく「〜してはならない」の意味であるということがわかります。

ただし口外無用の場合は「口外してはならない」とそのまま解釈できるのでわかりやすいですが、天地無用の場合は「上下(を動か)してはならない」と少し言葉を補って解釈しなければなりません。

このようにちょっと解釈を間違えただけで、全く逆の意味になってしまうというのはなかなか厄介な表現ですね。

 
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