「とりあえずビール」の「とりあえず」について
誰でも、話をするときや文章を書くときの「言葉ぐせ」のようなものがあると思います。
私の場合、無意識のうちによく使ってしまうのが「とりあえず」という表現。
でも、「とりあえず」って正確にはどんな意味なのでしょう?
案外説明できないなと思ったので、手元の辞書を調べてみました。
とりあえず【取り敢えず】
〔取るべきものも取らずに、の意〕本格的な処置は後のこととして当面その場でできる範囲で緊急の事態に対処する様子。
「新明解国語辞典 第七版」
言われてみれば、確かにそのとおり。ただし実際の会話では「とりあえずビール」のように、軽いニュアンスで用いることもよくあります。
このいかにも日本的な表現「とりあえずビール」を英語で表現するとしたら、いったいどのようになるでしょう?
オンライン辞書の『英辞郎』には次のような表現がのっていました。
とりあえずビールから飲み始める
start off with beer
「英辞郎」
なるほど! これは上手い表現!
、、、と思ったのですが、よくよく考えてみると「とりあえずビール」の持っている、
- 考えるの面倒だから、定番のビールでいいよーという投げやりな感じ
- ずっと飲みたいと思ってたんだから、一秒でも早くビールを!という前のめりな感じ
などは伝わってきません。
それは言葉ではなく文化の問題でしょう、と言われたらそれまでなのかもしれませんが、「とりあえずビール」の「とりあえず」には翻訳不可能な独特の手触りのようなものがあります。
言葉を翻訳するというのは本当に難しいものだと思います。
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