画家とペンキ屋の違いについて
フィンランド語の maalari(マーラリ)という単語には「画家」と「ペンキ屋」という二つの意味があります。
初めて知ったときには「へえー、画家とペンキ屋が同じ単語なんだ」と思ったのですが、考えてみると英語でも画家とペンキ屋は同じ painter です。
painter
- a person whose job is painting building, walls, etc.
- an artist who paints pictures
「Oxford Advanced Learner’s Dictionary」
ということは、
He is a painter.
と言われても、彼が画家なのかペンキ屋なのかはわからないということ。
もっとも実際に使われる文には文脈という支えがあるので、本当にどちらかわからないというケースは少ないでしょう。
ただ改めて「画家とペンキ屋の違いは何だろう?」と考えてみると、その違いをきちんと定義するのは案外難しいような気もします。
例えば、画用紙やキャンバスに描く人は画家、建物や壁に描く人はペンキ屋という区別が思い付くかもしれません。
しかし考えてみれば、建物や壁に描く画家だって存在します。
あるいは、一色に塗る人はペンキ屋、カラフルに塗る人は画家という区別が思い付くかもしれません。
しかし考えてみれば、カラフルに塗るペンキ屋もいない訳ではないでしょう。
。。。
それならばいっそペンキ屋さんびいきに、役に立つ仕事をするのがペンキ屋、役に立たない仕事をするのが画家と言ってみるのはどうでしょう?
しかし今この瞬間にも世界中の美術館で人々を愉しませている作品のことを考えれば、役に立たないと言い切ってしまうのもフェアではありません。
結局、きちんと定義しようとすればするほど、画家とペンキ屋というのはそれほど違わないのかもしれない、そんな考えに辿り着いてしまいます。