日本語の「ふ」の秘密

16052901

ヘボン式のローマ字表記では、ハ行を次のように表します。

ha hi fu he ho

 

不思議なのは「は、ひ、ふ、へ、ほ」のうち、「ふ」だけが hu ではなく fu になるということ。

ここではまず、かなをローマ字に直すのではなく、ローマ字をかなに直すという逆の視点から見てみましょう。

「ha, hi, hu, he, ho」と「fa, fi, fu, fe, fo」というローマ字を用意して、それぞれをかなに直すとすれば、おそらく次のようになるのではないでしょうか。

ローマ字 ha hi hu he ho
かな
かな ふぁ ふぃ ふぇ ふぉ
ローマ字 fa fi fu fe fo

 

「ふぁ、ふぃ、ふぇ、ふぉ」というのは次のように外来語で使われる音。

  • ファミレス
  • フィンランド
  • フェンシング
  • フォーク

しかし「ふぅ」という音はないので、fu も hu もかなで表せば同じ「ふ」になってしまいます。

それなのに「は、ひ、ふ、へ、ほ」のうち「ふ」だけを異なる表記にする意味は何なのでしょう?

ヘボン式のローマ字というのは、もともと英語の発音を念頭に置いて作られた表記方法です。

「ふ」のところだけ[h]の代わりに[f]を使っているということは、英語の母語話者にとって hu の発音は難しいということ。

なぜかといえば、日本語の「ふ」というのは、国際音声記号(IPA)で表すと[hu]でなく[ɸɯ]という音になるため。

この[ɸ]という子音は現代の日本語において「ふぁ、ふぃ、ふ、ふぇ、ふぉ」の中で使われています。

発音記号 ha çi ɸɯ he ho
かな
かな ふぁ ふぃ ふぇ ふぉ
発音記号 ɸa ɸi ɸɯ ɸe ɸo

 

このローマ字、仮名、発音記号の関係を見ると、日本語のハ行の一筋縄ではいかない複雑さが見えてきます。

「ふ」だけではなく「ひ」の中にも見慣れない記号が見えていますが、それはまた別の話。