フィンランド映画祭2016で『王となった少女』を観てきました。

photo credit: Tuomas A. Lehtinen Photography Turku castle 2 via photopin (license)

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昨日に続いて、フィンランド映画祭2016のレポートを。

フィンランド映画祭 2016

今回はミカ・カウリスマキ監督の新作『王となった少女(原題:The Girl King)』を観てきました。

王となった少女
原題:The Girl King
106分/2015年/カラー/デジタル上映

スウェーデン女王で歴史上のアイコンの一人、フィンランド大公も兼ねた若きクリスティーナの物語。
17世紀前半、ヨーロッパ全土を揺るがした三十年戦争のさなか、父グスタフ・アドルフの跡を継ぎ6歳で即位したクリスティーナ。幼いころから少年のように育てられた彼女だったが、豊かな知性と教養に溢れる人物へと成長していく。しかし次第に権力や伝統に抑え込まれ、まるで迷宮に入り込んでいるような日々を過ごしていた。やがて美しくエレガントな女官エバ伯爵夫人と出会い愛を見出す。そして、聡明な彼女は自由を求めスウェーデンを現代化するため保守的な軍隊との戦いを決意するのだった。この劇的かつ絢爛たる女王の肖像を描くのはフィンランドを代表する偉才ミカ・カウリスマキ監督。

映画を見る前は、主人公のクリスティーナやこの時代についての予備知識は全くなかったのですが、映画が始まってすぐに物語の世界にぐっと引き込まれました。

何よりも主人公のクリスティーナのキャラクターがとても魅力的に描かれていて、そこがこの映画の最大の魅力になっているのではないかと思います。

人間関係に悩み、どうやったら自分の感情をコントロールできるのだろうと葛藤するシーンなどは、歴史映画というより、現代の人間ドラマのようでもあります。

一方、クリスティーナがカトリックへの改宗を考えるあたりは、彼女の心の動きがあまりよく理解できず。当時の時代背景や宗教・歴史についての知識がもう少しあれば、より深く映画を理解できたのかもしれません。

ただそのような知識がなくても、一人の女性の生き方を描いた人間ドラマとして、誰でも楽しむことができる映画だと思います。

劇中、クリスティーナは哲学者のルネ・デカルトをストックホルムに招きます。そのデカルトを演じている役者さんが一般に知られているデカルトの肖像画と瓜二つなのにびっくり。もともとそっくりな人を起用したのか、あるいはコスチュームやメイクで似せたのか。いずれにしても一見の価値ありです。

↓この肖像画

After Frans Hals (1582/1583–1666) [Public domain], via Wikimedia Commons

After Frans Hals (1582/1583–1666) [Public domain], via Wikimedia Commons

なお本作で使われている言語は英語とスウェーデン語なので、フィンランド語の響きを楽しむことはできません。ただ本編終了後のエンドクレジットによると、ロケ地はフィンランドのトゥルク(Turku)とドイツのいくつかの街となっていました。17世紀のお城やそこに暮らす貴族の生活様式なども映画の見所の一つだと思います。