フィンランド語学習記 vol.450 − 賢い馬鹿は馬鹿な賢者より賢い
Wikiquote を眺めていたら、次のようなフィンランド語のことわざ(?)が出ていました。
Viisas tyhmä on viisaampi kuin tyhmä viisas.
(賢い馬鹿は馬鹿な賢者より賢い。)
(賢い馬鹿は馬鹿な賢者より賢い。)
フィン | 英 | 日 |
---|---|---|
viisas | wise | 賢い |
tyhmä | stupid | 愚かな |
おもしろいのは「賢い」を意味する viisas という単語が比較級の viisaampi も含めて3回も使われているということ。
ここでは念のため、viisaampi の作り方をおさらいしておきましょう。
viisas | 1)単数語幹を求める | → | viisaa |
viisaa | 2)kpt の変化を伴う単語では弱形の語幹を使用 *今回は kpt の変化なし |
= | viisaa |
viisaa | 3)2音節の語では語末の[-a/-ä]が[e]に変化する *今回はそのまま |
= | viisaa |
viisaa | 4)語幹に比較級の印[-mpi]を付ける | → | viisaampi |
ところで「賢い馬鹿、馬鹿な賢者」というのは一種の形容矛盾、別の言い方では撞着語法(英:oxymoron)と呼ばれる修辞技法の一つです。
Viisas tyhmä on viisaampi kuin tyhmä viisas.
(賢い馬鹿は馬鹿な賢者より賢い。)
(賢い馬鹿は馬鹿な賢者より賢い。)
この表現の中では「賢い」ということが評価され、同時に貶められてもいます。
論理的には破綻した表現なのに、これを一つの箴言と捉えることのできる人間の知性というのは凄いもの。
人工知能はこのような文をどう解釈するのでしょう?