「遺体」と「死体」の違いとは?

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人のなきがらを意味する「遺体」と「死体」の違いとは何でしょう?

一見、取り替え可能な言葉のようにも思えますが、その意味するところは微妙に異なっています。

例えば、次の下線部に「遺体」と「死体」のどちらかを入れてみてください。

(1)   をひきとる
(2)   をなげすてる

おそらく多くの人は(1)に遺体、(2)に死体を入れるのではないでしょうか。

これはなぜなのでしょう?

このニュアンスの違いを探るために、国語辞書を引いてみました。

いたい【遺体】

死んで葬られるべき人のからだ。遺骸(イガイ)。〔人格を主とした言い方〕

「新明解国語辞典 第七版」

したい【死体・屍体】

命が無くなって、そこに横たわっているからだ。

「新明解国語辞典 第七版」

ポイントは遺体の語義にある〔人格を主とした言い方〕という部分でしょう。

死体という言葉は遺体に比べるとどこか即物的。

一方、遺体という言葉は、単にその人格を尊重するだけではなく、つながりのある家族や友人など他者の存在を想起させます。

他の言語に同様の使い分けがあるのかどうかわかりませんが、「遺体/死体」というのは日本語らしい繊細な使い分けの一つだと思います。