[i]で終わる単語はどこから来るのか − フィンランド語と英語の場合

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フィンランド語には[i]で終わる単語がたくさんあり、その多くは外来語です。いくつか並べてみましょう。

Japani 日本
kassi 手さげ袋
kaupunki 都市
lasi グラス
lauantai 日曜日
pankki 銀行
posti 郵便局
tuoli イス

 
一方、英語には[i]で終わる単語がほとんどありません。

先日読んだ『楽しみながらボキャブラリーが増える 英語の語源のはなし』という本によると、その数少ない例外として、taxiski が紹介されていました。

taxi は[taximeter cab → taxicab → taxi]と短縮されて出来た単語で、もともとは[i]で終わる形ではなかったのだとか。

また ski はノルウェー語を起源とし、英語に流入した結果、いつのまにか skid(滑る)に取って代わるようになったのだそうです。

その他、フィンランド語に比べると少ないものの、英語にも[i]で終わる外来語はいくつかあり、例えば spaghetti(イタリア語)、safari(アラビア語)、kiwi(マオリ語)などは日本人にも馴染みのある単語です。

またラテン語を起源とする英単語には[i]で終わる複数形を持つものがあります。単数・複数の語尾に注目してみてください。

単数 複数
alumnus alumni (男子)卒業生、同窓生
cactus cacti サボテン
focus foci 焦点
nucleus nuclei 中心、核心
octopus octopi タコ
radius radii 半径
stimulus stimuli 刺激
thesaurus thesauri シソーラス、類義語辞典

 
語尾の[-us]⇒[-i]という変化は、ラテン語文法のルールから来ています。ただし古めかしいイメージもあり、いくつかの語では octopuses のように英語的な複数形を標準とするようになってきました。

その中でも数少ない現役選手である alumni という語は、15年くらい前に読んだ『ガープの世界』という小説で初めて見て「へえ、こんな単語があるんだ」と思ったのをなぜか今でもよく覚えています。

フィンランド語・英語ともに[i]で終わる単語には外来語が多いという点は同じなのに、フィンランド語ではその数がどんどん増え、英語では衰退に向かうというのは、なんだか面白い現象ですね。

 

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