優性・劣性
きのうのニュースより。
遺伝の「優性」「劣性」使うのやめます 学会が用語改訂 (朝日新聞デジタル) – Yahoo!ニュース
遺伝学における「優性・劣性」という用語は、本来何かの優劣を意味する訳ではないが、そのように誤解されやすいので、学会としては今後「顕性・潜性」という用語に置き換えていきたいとのこと。
いわゆる優性遺伝・劣性遺伝などと言うときの「優性・劣性」ですね。
このニュースを読んで気になったことが二つありました。
まず一つ目は「優性・劣性」は一般の国語辞書ではどのように定義されているのかということ。
さっそく辞書を引いてみました。
ゆうせい[優性](名)
①〔文〕すぐれた性質(のもの)。
②〘生〙〔遺伝で〕対立する形質のうち、交配したとき次の代〔=雑種第一代〕に発現するほう。
「ー遺伝」
▷(↔劣性)
「三省堂国語辞典 第七版」
れっせい[劣性](名)
①〔文〕劣等な性質(のもの)。
②〘生〙〔遺伝で〕対立する形質のうち、交配したとき次の代〔=雑種第一代〕には発現せず、それ以後の代で発現するほう。
「ー遺伝」
▷(↔優性)
「三省堂国語辞典 第七版」
素人でもよくわかる説明が出ていました。
ただあくまでも一つ目の語義は「すぐれた性質、劣等な性質」ですし、これらの用語から優劣を連想してしまうということは避けられそうにありません。
そういう意味では「顕性・潜性」に置き換えるというのは長期的には正しい判断なのかもしれません。
そしてもう一つ気になったのは、言葉を置き換えるというのはどのくらいの労力と時間を要する作業なのかということ。
遺伝学の専門用語とはいっても、一般の国語辞書に掲載されているくらい普及した単語を特定の団体の影響力で変えていこうというのは、なかなか大変なことだと思います。
というのも、言葉を置き換えるということは、単に「変えます!」と宣言するだけでなく、実際に人々に普及し、上記のような国語辞書に新しい用語の「顕性・潜性」が掲載されるくらいのレベルに至って、初めて本当の意味で言葉を置き換えることができたと言えるのではないかと思うからです。
論文などに使われる用語が変わればよいという意見もあるかもしれませんが、そもそもの変更動機である「誤解されやすいから変えたい」というのは、エキスパートではなく、私たち素人を想定した発言のはずです。
そういう意味では、新しい用語が普及するのにどれくらいの時間が必要なのか、あるいは普及せずに終わってしまうのか、それを確かめるためにも、まずはこんなニュースがあったということをここに書き留めておきたいと思います。
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カテゴリ: 辞書/辞典/その他, 教育
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