atlas(アトラス)

17102101

昔から地図を眺めるのが好きでした。

風変わりな地名を見つけたり、そこに住む人々の暮らしを想像したり。

地図というのは私たちの手元に置くことのできるコンパクトな「世界」であり、その楽しみ方は眺める人の数だけ無限にあるような気がします。

机の脇には昔アメリカで購入した World Atlas の本が置いてあるのですが、英語の地図帳を眺めていると「この地名は英語ではこんな風に表すんだ」というような発見もあります。

World Atlas の atlas というのは「地図帳」の意味。地図一枚なら map ですが、それがたくさん集まると atlas になります。

この atlas という英単語にはいったいどのような由来があるのでしょう?

オンラインの語源辞書『Online Etymology Dictionary』には次のような記述が出ています。

atlas

“collection of maps in a volume,” 1636, first in the title of the English translation of “Atlas, sive cosmographicae meditationes de fabrica mundi” (1585) by Flemish geographer Gerhardus Mercator (1512-1594), who might have been the first to use this word in this way. A picture of the Titan Atlas holding up the world appeared on the frontispiece of this and other early map collections.

「Online Etymology Dictionary」

atlas(アトラス)というのはもともとギリシア神話の神様の名前。ゼウスとの戦いに敗れた彼はその巨大な体で世界を支える役割を担わされました。

この atlas と地図帳のつながりを作ったのは、いわゆるメルカトル図法で有名なフランドルの地理学者メルカトル。

彼が16世紀末に編纂した地図帳の表紙に atlas の姿を描き、本のタイトルにも atlas を入れたことで、後年、地図帳を意味する一般名詞として定着したのだそうです。

なおアトラスという単語は日本語の中にも入り込んでいます。

アトラス(名)〔atlas〕

地図を本の形にまとめたもの。地図帳。

→:マップ。

「三省堂国語辞典 第七版」

世界を支え続けたアトラスはやがて年をとり、その苦行から逃れるため、自らメデューサの首を見て石になったという伝説もあるのだとか。

そんなアトラスの名前は今や世界中の地図帳に冠されています。これは長年の苦行に報いて与えられた名誉の一つなのかもしれません。

 
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