フィンランド映画祭2017で『月の森のカイサ』を観てきました。

17110501

昨日から始まった「フィンランド映画祭 2017」の二日目。

フィンランド映画祭 2017

今日はまず13:30より『月の森のカイサ』という作品を観ます。こちらはスカンジナビア半島の先住民族であるサーミの人々についてのドキュメンタリー。

あらすじは映画祭の公式ホームページより。

月の森のカイサ
Kuun metsän Kaisa/ Kaisa’s Enchanted Forest

スイスの作家ロベール・クロットエ(1908 − 1987)は、1930年代、かねてより夢見てきたフィンランド北部のスコルト・サーミ部族に会うために、北に向かって旅に出る。彼の想いは部族に受け入れられ、スコルトの長老カイサと緊密な友情を育んでいく。カイサはクロットエに部族の豊かな伝説と伝記を外部に伝承することを許可する。これはクロットエと脆弱な部族との生涯にわたる関係の始まりでもあった。クロットエの書籍、写真、ビデオ、音声テープを使用して、カイサ自身の子孫カトゥヤ・ガウリロフによる本作は、異なる二つの文化の出会いと二人の友情についての詩的な探求である。それは真実とフィクションの境界にあり、スコルトの伝説とカイサの気まぐれな音楽をアニメーションで表現するなど、フィンランドの遥か北の地方にひっそりと生きる人々の暖かく愛に満ちたポートレートである。

あらすじによると本作はサーミの長老の子孫が記録したドキュメンタリーであるとのこと。どんな内容なのか俄然気になります。

映画の冒頭、スコルト・サーミ(Skolt Sami)の伝説がアニメーションで語られていきます。しかしその物語は完結せず、映画は本作の語り部である作家ロベール・クロットエ(Robert Crottet)のライフヒストリーへと移っていきます。

幼い頃に母親を亡くした彼がなぜ北の文化に惹きつけられたのか、その核心部分は語られることがないのですが、同じように北の文化に魅力を感じる自分のような人間にとっては理屈抜きに共感できる部分がありました。

物語はまだ平和な時代のスコルト・サーミの人々とクロットエの交流、そこから戦争の時代へと進んでいきます。

ちょうど今、読んでいる『物語 フィンランドの歴史』というフィンランド史の入門書にも詳しくは出てこなかったサーミの人々と戦争との関わりがリアリティを持って語られます。

 

物語 フィンランドの歴史 - 北欧先進国「バルトの乙女」の800年 (中公新書)
石野 裕子
中央公論新社
売り上げランキング: 2,632

 
本作の元になっている映像はクロットエのパートナーが私的に撮影した過去のフィルムが元になっているとのこと。その古いフィルムの質感とフランス語の静謐なナレーションがあいまって、ドキュメンタリー映画というより、私的な記録映画を見ているような気分になります。

またこれまでサーミの言葉をきちんと聞いたことがなかったので、その言葉の響きを味わうことができたのも、言葉好きの自分にとっては嬉しいことでした。

いわゆる「北」の歴史や文化に興味のある人にはオススメの作品だと思います。