美人でない人
いきなり不謹慎なタイトルで申し訳ありません。
先日あるエッセイを読んでいたら「どの国も美人と非美人の比率は変わらない」という一節が出てきました。
ここで考えてみたいのは、本当にどの国も美人と非美人の比率は変わらないのか、、、ということではなく「非美人」という表現について。
美人でない人は「非美人」ではなく「不美人」なのでは?と思ったのです。
辞書を引いてみると、やはり見出し語になっているのは不美人の方でした。
ふびじん[不美人](名)
美人でない〈こと/女性〉。(↔美人)
「三省堂国語辞典 第七版」
ではさきほどの非美人という表現は単なる間違いなのか?というと、必ずしもそうは言い切れないような気がします。
不美人というのはたしかに辞書に出ている言葉ではありますが、いわゆる手垢のついた表現であり、どことなく品のなさを感じます。
その点、非美人の方がより中立的で politically correct なイメージがあるので、著者は無意識に非美人という表現を使ったのではないか。そんな推理を働かせてみたくなります。
ではこのような不と非によるニュアンスの違いというのは他の単語にもあるのでしょうか?
それを探るため、不と非で始まる単語をいくつか国語辞書から拾ってみました。
- ふかくじつ[不確実]
- ふかのう[不可能]
- ふけんこう[不健康]
- ふまじめ[不真面目]
- ふまんぞく[不満足]
- ふろうふし[不老不死]
- ひこうりつ[非効率]
- ひこくみん[非国民]
- ひじょうしき[非常識]
- ひせいき[非正規]
- ひせんとういん[非戦闘員]
- ひぼん[非凡]
ここからわかるのは、不と非で始まる言葉の多くは、不と非を入れ替えると著しく不自然になるということ。
よって「不美人・非美人」のように入れ替えてみてニュアンスの違いを探るというのは難しいものがあります。
では不と非のどちらかしか使えない場合には、いったいどのような法則で不と非の選択が決まっているのでしょう?
その規則性を理解することができれば、不美人と非美人の違いももっと上手く説明できるのかもしれません。
しかしこれはこのコラムで結論を出すにはあまりに奥深い問題。今後の継続課題にしたいと思います。
三省堂国語辞典 第七版
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カテゴリ: 辞書/辞典/その他, 教育
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