代赭色(たいしゃいろ)ってどんな色?

18021101

深田久弥『日本百名山』の至仏山(しぶつさん)の項を読んでいたら、次のような一節が出てきました。

噂に聞く尾瀬ヶ原を見下ろしたのも、その時が初めてであった。原一面まるで燃えるような代赭色で、それがずっと向うの端、ピラミッドの燧の裾まで延びている。美しい尾瀬の第一印象を至仏の頂上で得たことは、私の幸福であった。

ここに出て来る「代赭色」というのはいったいどんな色なのでしょう?

辞書を引いてみると、次のように出ていました。

たいしゃ[(代×赭)](名)

茶色をおびた だいだい色。赤土色。たいしゃいろ。

「三省堂国語辞典 第七版」

代赭色というのは赤土の色なんですね。

Webで検索してみると、こんな色見本が出てきました。

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なるほど。おそらくは尾瀬の草紅葉を代赭色と形容したのでしょう。

色の名前というのは、私たちがこの世界を見る眼鏡のようなもの。

もし色名として「黒、白、赤、青」という4つの言葉しか知らなければ、私たちの眼前の世界は4色に映ることでしょう。

そこに「黄」や「緑」という語彙を加えることで、色彩のグラデーションの中に初めて「黄」や「緑」という色を認識することができます。

「代赭」という少々耳慣れない色名もまた同様で、深田久弥が尾瀬の草紅葉を「燃えるような代赭色」と形容することができたのも、この言葉を自身の辞書に加えていたからに他なりません。

そういう意味で色の名前というのは眼前の世界をカラフルにしてくれる魔法の道具のようであり、そこから敷衍して考えてみれば、それは色の言葉に限らず、あらゆる言葉に当てはまるということに気付かされます。

新しい言葉を知るということは、私たちの世界の見方をアップグレードすること。そこに人と言葉の関係の本質があるのかもしれません。

 

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