一番強い者@ユーロスペース

18021401

昨日は渋谷のユーロスペースで開催している「トーキョー ノーザンライツ フェスティバル 2018」へ。

『一番強い者』というスウェーデンのサイレント映画を観てきました。

映画祭の公式ホームページより、あらすじを転載します。

一番強い者

Den starkaste : En berättelse från Ishavet / The Strongest

監督:アクセル・リンドブロム、アルフ・シェーベルイ Axel Lindblom, Alf Sjöberg / 1929年 / スウェーデン / intertitle:スウェーデン語(Swedish) / 106min / 字幕:日本語

北極での狩猟に雇われた水夫のオーレと船長の娘インゲボルグは惹かれ合うが、彼女には婚約者がいた…。A・リンドブロムが1920年に北極で撮影した記録映像に、A・シェ―ベルイが後に撮り足したドラマ部分を巧みに結合させ創り上げた奇跡のアクション・ラブストーリー。息をのむような迫力ある映像と俳優たちの生き生きとした魅力に圧倒される。

原題の starkaste はスウェーデン語で strong を意味する stark の最上級の形。

stark – starkare – starkast と変化するようです。

映画は、婚約者のいる娘が後からやってきた男と恋に落ちるといういわゆるメロドラマ。

ただ北国の美しい風景の中できびきびと進んでいくストーリーに緩みはありません。

そして今回改めて思ったのは、100年も前に生きていた人の暮らしぶりを映像を通して間近に見られるというのは凄いことだということ。

こんな服を着て、こんな食事をして、こんな家に住んでいたのかと、思わず一つ一つのディテールに注目してしまいます。

現代の私たちが「これがなくては生活できない!」と思い込んでいるものの大半はこの時代には存在しませんが、映画の中の人々はそれぞれの人生を謳歌しています。

そういう意味で古い映画を観ることは「人の暮らしの本質って何だろう?」ということを考える契機になったりします。

なお解説によるとこの映画には1920年に北極で撮影した記録映像が使われているとのこと。

実際、映画の中には荒涼とした北極海の風景やそこに生きるアザラシやシロクマのリアルな姿が映し出されています。

ただ記録映像と劇映画のパートは巧みに組み合わされているので、映画を観ている間に編集を意識することはほとんどありませんでした。

またこの映画に彩りを添えるのが、サイレント映画ピアニストの柳下美恵さんの生演奏。

北極の雄大な自然、その自然と対峙する人間たちの高揚感や不安感を表現する伴奏もまたこの映画のもう一人の主人公だったように思います。

その旋律に浸りながら106分の非日常の世界をゆっくりと味わうことができました。