しりつ? いちりつ?
日本語には数多くの同音異義語があります。
例えば「はし(端)、はし(箸)、はし(橋)」など。
その大半を日本語のネイティブである私たちは苦もなく使い分けている訳ですが、時には意味をはっきりさせるために読み方そのものを変えてしまうことも。
しりつ[市立](名)
市が作り、維持する〈こと/もの〉。〔「私立」と区別して「いちりつ」とも言う〕
「ー図書館」
「三省堂国語辞典 第七版」
しりつ[私立](名)
民間の人が作り、維持する〈こと/もの〉。〔「市立」と区別して「わたくしりつ」とも言う〕
「ー大学・ー学校」
(↔公立)
「三省堂国語辞典 第七版」
三国では上記のように語釈中で「いちりつ、わたくしりつ」の読み方に触れるだけではなく、これらの読みを見出し語としても立項しています。
いちりつ[市立](名)
市立。〔「私立」とまぎれないように言う〕
「ー高校」
「三省堂国語辞典 第七版」
わたくしりつ[私立](名)
私立を、同じ発音の「市立」と区別するための呼び方。〔市立は「いちりつ」と呼ぶことがある〕
「ーの学校」
「三省堂国語辞典 第七版」
そういえば以前、日本語を外国語として学んでいる人が日本語についての質問をするウェブサイトで、
という質問を見たことがあります。
さて、自分ならこの質問にどう答えるでしょう?
前提として、固有名詞に使われている場合は間違いなく「しりつ」でよいはずです。
ただわざわざこのようなツイートをしているということは、「いちりつ」と読む人がそれだけ多いということ。
そして日常的なコミュニケーションにおいては、「正式な読み方」以外の読み方も考慮する必要があります。よって、
- 正しくは「しりつ」と読む。
- しかし同音の「私立」と混同しないように「いちりつ」と読むこともある。
という説明で納得してもらえるものでしょうか?
英語にも right, write のような同音異義語はありますが、発音が変わるということはないので、感覚的に理解してもらうのはなかなか大変かもしれません。
三省堂国語辞典 第七版
価格: ¥1,700(記事公開時)
カテゴリ: 辞書/辞典/その他, 教育
App Storeで詳細を見る