英単語のスペリングとシェークスピアの秘密

中学や高校のテストで、英単語の綴り間違いを指摘された経験はありますか?

文意が伝わっていても、綴り間違いで減点というのはよくあること。

しかしこのスペリング(spelling)、歴史的には大変いい加減なものであった可能性が高いのです。

Bill Bryson 著『Mother Tongue』によると、17世紀頃のイギリスでは一つの単語に対し様々な綴り字が混在していたようです。

例えば、現在の where に対しては、wher, whair, wair, wheare, were, whear などの文字が当てられていたとか。

人名についてもフレキシブルで、シェークスピア(Shakespeare)の名前の表記に関しては、Shagspeare, Shakspere, Shakestaffe など、何と80種類以上(!)の綴りの記録が見つかっているそうです。

なお現存するシェークスピアの自筆の署名は6つあり、その中で同じ綴りのものは一つもないとのこと。

またシェークスピアの遺言状にはシェークスピアの自筆の署名が2か所にあり、その一つは Shakspere であり、もう一つは Shakspeare なのだそうです。

ここまで来ると、英文のライティングでシソーラス(同義語辞書)を使って繰り返しを避けるように、同じ語でも様々な綴りを使うことが推奨されていたのかな?などと思ってしまいます。

なお上記の様々な「シェークスピア」の綴りのうち、シェークスピア自身が一度も使わなかったのが、現在のスタンダードである Shakespeare なのだとか。これもまた面白い話ですね。

言葉というのは何よりもまず話し言葉であり、綴りよりも音が優先されていたということなのでしょう。

中学や高校のテストでも、独創的な綴りを考案した生徒に加点するような考え方があれば面白いのですが、正書法がこれほど発達した現代ではもはや不可能なことだと思います。

おおらかな時代のおおらかな話なのかもしれません。

 

Mother Tongue: The Story of the English Language
Bill Bryson
Penguin
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