『外国語上達法』読書ノート⑦ − 教師
『外国語上達法』読書ノートの第七回目です。
この連載では、岩波新書より出ている千野栄一先生の『外国語上達法』を読み、感じたこと、考えたことを一章ごとにまとめていきます。
目次はこちら。
1 | はじめに |
2 | 目的と目標 |
3 | 必要なもの |
4 | 語彙 |
5 | 文法 |
6 | 学習書 |
7 | 教師(←本稿) |
8 | 辞書 |
9 | 発音 |
10 | 会話 |
11 | レアリア |
12 | まとめ |
教師 − こんな先生に教わりたい
語学力
まず第一に、語学教師は自身、その語学がよくできなければならない。
P.108
教師自身の語学力をどこまで求めるかは学習者のレベルにもよるでしょう。
しかしいくら初学者が相手でも、間違った内容を教えていたのではどうしようもありません。やはり一定の語学力は優れた語学教師であるための最低条件と言えます。
ただ最近の日本では、このことに厳しくなりすぎるあまり、過剰なネイティブ信仰になっているところもあるのではないでしょうか。
もちろん(特に中級以降)ネイティブの先生に習うメリットはあると思いますし、そのこと自体を否定するつもりはありません。
ただし私自身は、どんなに立派な経歴があったとしても、外国語の本格的な学習経験がない先生だけは困るなあという気持ちがあります。
日本人の先生であれ、ネイティブの先生であれ、語学の大変さや楽しさを共有できる先生がよいと思うのですが、いかがでしょうか?
指導技術
優れた語学教師の第二の資格は、教え方が上手であるということである。
P.113
昔、塾の講師をやっていたことがあるので、指導技術の大切さいうのは骨身に沁みて分かっているつもりです。
指導技術というのは、大学などで教えてくれるものではなく、各々が書籍を読んで研究したり、研修会に出席したり、生徒からのフィードバックを参考にしたりすることでレベルアップに努めるよりほかないものだと思います。
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私自身は、語学教室で教え方が上手な先生というのは、何よりも生徒を参加させること、アウトプットを促すことが上手な先生だと思います。
初学者が中心の教室では、先生が一番喋っているという状況はある程度やむを得ないのですが、その中でも生徒が喋る時間を確保するための工夫を凝らしている先生には非常に共感できます。
熱意と魅力
よい教師の第三番目の資格は、教えることに対する熱意というか、その先生の個人的魅力というか、この先生についていかないと損をするというような気持ちにさせる全人格というようなものである。
P.118
私自身が習っていて楽しい先生というのは、何よりもことばが好きでたまらないというオーラを出している先生です。
そういった先生というのは、例えば英語で三単現のSなどの文法項目を導入するときに、予め決められた規則として紹介するのではなく、それがいかに特別でおもしろい現象かということを延々と語ってくれたりします。
そういった先生のクラスからは、将来本格的に語学に取り組んでみようという生徒が多く出てくるのではないでしょうか。
究極の語学教師とは?
最後に、私が考える究極の語学教師像について書いてみたいと思います。
次のような状況を想像してみてください。
「先生に言われたことはどんなことでもします。1年で日本語の日常会話をきちんと話せるようにしてください。」
これこそは語学教師に突き付けられる究極の要求ではないでしょうか。
もちろん万人に共通の学習法などある訳がないので、その学習者のバックグラウンド(年齢、学習歴など)を勘案しながら、いっしょに学習計画を立てていくことになるのだと思います。
そうではあっても、このような要求にきちんと向き合い、適切な方向に導くことができること。それが語学教師に必要な能力だと言ったら厳しすぎるでしょうか。
本章のまとめ
語学教師に必要な資質は以下の3点。
- その言語をよく知っていること
- 教え方が上手であること
- 教育への熱意と人間的な魅力があること
一つずつ見ると当然のようにも思える3項目ですが、これを全て満たす先生というのをいったい何人思い浮かべることが出来るでしょうか。そう考えると、外国語を教えるということは究極の専門職なのだと思わずにはいられません。
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