begin と start の違いとは?
休日の午後、のんびりとコーヒーを飲みながら、何か音楽でも聴こうかなというときに、ときどき候補に挙がってくるのが、The Millennium の『Begin』というアルバムです。
ビートルズの『ホワイト・アルバム』と同じ1968年に発売されたこのアルバムは、今でこそソフトロックの名盤としての評価を確立していますが、発売当時は全く売れなかったとのこと。
学生時代から聴いている長い付き合いの一枚で、ときどき思い出したように聴きたくなることがあります。
『Begin』というタイトルには独特の情感が伴っており、もしこのタイトルが『Start』だったとしたら全く異なるイメージが浮かんでくることでしょう。単なる思い込みかもしれないのですが、start の方が少し無機質な感じがします。
一般的に同義語として扱われる begin と start ですが、実際にはどのような相違点があるのでしょうか? 今回のエントリーではそのあたりを探ってみたいと思います。
begin はフォーマル
『Practical English Usage』によると、begin と start は基本的に同じ意味で使うことができるそうです。ただし begin の方がよりフォーマルなのだとか。
1 meaning; formality
Begin and start can both be used with the same meaning.
- I began/started teaching when I was 24.
- If Sheila doesn’t come soon, let’s begin/start without her.
We generally prefer begin when we are using a more formal style. Compare:
- We will begin the meeting with a message from the President.
- Damn! It’s starting to rain.
なるほど、大統領からのメッセージを伴うような会合にふさわしいのは start よりも begin なんですね。
begin は書き言葉で好まれる
一方『ウィズダム英和辞典』では、両者の違いを次のように説明します。
(1)begin が小説などの書き言葉で好まれるのに対し、start は会話から書き言葉まで広く用いられる。
(2)連続して起こる出来事の最初を述べるときには begin
▶The story begins on Prince Edward Island.
物語はプリンス・エドワード島から始まる。
begin には「これから物語が始まる」というような幕開けの雰囲気が漂っています。冒頭で言及した begin に伴う独特の情感というのは、あるいはこのような要素だったのかもしれません。
start は「静から動」
start と比べると、begin にはさまざまな用法の制限があります。begin が使えないようなケースを見てみましょう。
(3)start が静から動への移行を表すのに対して, begin にはそのような意味はない。
(a)「出発する」
▶We are starting[×beginning]at 7:00 a.m. tomorrow.
明日の朝7時に出発することになっている。(b)「(特定の方向に)動き出す」
▶He started[×began]down the road to the car.
彼は車に向かって歩き出した。(c)「<機械などが>始動する; …を始動させる」
▶The engine started[×began].
エンジンがかかった。(d)「発生させる」
▶Who started[×began]the rumor?
誰からそのうわさが出たのか。『ウィズダム英和辞典』
c の例文を見ると、たしかに The engine began などという表現はおかしく感じますし、begin と start は自由に入れ替え可能ではないということがよくわかります。
これらの用法を「静から動」という簡潔なキーワードでまとめるあたりは、さすがという感じです。
まとめ
以上、今回は begin と start の用法上の相違点をまとめてみました。意識的であれ、無意識的であれ、この使い分けがきちんとできたら、なかなかのものではないでしょうか。