フィンランド語学習記 vol.97 − 無から[k]を生み出す驚きの変化
フィンランド語教室は、学期と学期の間のお休み期間に入っています。
コツコツと動詞の活用をおさらいしていたところ、「何だこれは!」という驚きの変化に出会ったので書き留めておくことにします。
maata(横たわる)
問題の動詞は maata(横たわる)。[-ata]で終わっているので、タイプ4の動詞に当たります。
タイプ1 | 2つの母音で終わる動詞 |
---|---|
タイプ2 | [dA]で終わる動詞 |
タイプ3 | [lA, nA, rA, stA]で終わる動詞 |
タイプ4 | [AtA, OtA, utA]で終わる動詞 |
タイプ5 | [itA]で終わる動詞 |
タイプ6 | [etA]で終わる動詞 |
[参考]フィンランド語学習記 vol.95− 動詞の活用と語幹の変化(タイプ2〜4) | Fragments
語形変化のステップを一つずつ見ていきましょう。
1)語末の[t]を外す
[a]が3つ並んでいるのは、どうもおかしな感じがします。フィンランド語には三重母音禁止というルールがあったはず。
この違和感を大切にしつつ、まずは次のステップへ進みましょう。
2)kpt 交替のチェック
語幹末尾の子音変化(kpt交替)をチェックします。
まずは変化表を見てみましょう。タイプ4の動詞は右から左へ変化することになっていました。
kk | ←→ | k |
k | ←→ | × |
uku | ←→ | uvu |
yky | ←→ | yvy |
nk | ←→ | ng |
lke | ←→ | lje |
rke | ←→ | rje |
hke | ←→ | hje |
pp | ←→ | p |
p | ←→ | v |
mp | ←→ | mm |
tt | ←→ | t |
t | ←→ | d |
nt | ←→ | nn |
lt | ←→ | ll |
rt | ←→ | rr |
どう見ても、maaa に当てはまる変化はないように見えます。
しかし!!
実は上から2番目の[k ← ×]という変化を適用するとのこと。母音が3つ並んでいるところへ、えいっと[k]を放り込んでみましょう。
要は母音が3つ並んでいるのは[×]を挟んでいるからだと判断し、適切な状態[k ← ×]に戻してあげなければならないのだそうです。
うーん、この変化はちょっと思い付きませんね。
3)人称ごとの活用語尾をつける
気を取り直して、活用語尾をつけておきましょう。
単数 | 複数 | |
---|---|---|
一人称 | -n | -mme |
二人称 | -t | -tte |
三人称 | 母音を重ねる | -vat/-vät |
以下のような活用形ができあがります。
単数 | 複数 | |
---|---|---|
一人称 | makaan | makaamme |
二人称 | makaat | makaatte |
三人称 | makaa | makaavat |
この際、三人称単数形は makaaa にならないので注意。せっかく[k]を挟んだのに再度三重母音ができてしまいます。
まとめ
今回はフィンランド語の動詞 maata(横たわる)の活用形を作ってみました。
何といっても二番目のステップ、何もないところに[k]を生み出すというのは、マジシャンもびっくりの変化だと思います。(思い付かない!)
フィンランド語は奥深いですね〜。