辞書は「左」をどう定義するか?

先日、ふとエスペラントに触れてみたくなり、iPhone アプリ「uTalk エスペラント語」を購入。挨拶や基本単語などを聞いていました。

そこでおもしろいなと思ったのが、左右の表現。

エスペラントで「右」は dekstre、「左」は maldekstre と言うそうです。

mal はエスペラントで「〜の逆」を表す接頭辞。すなわち「右の逆=左」ということなのですね。

左右をこんな風に表す言語には出会ったことがなかったので、何だか新鮮に感じました。

しかし左利きの自分としては、左の方に愛着があるので、左が右の逆というのはやや不満。などとどうでもいいことを考えていたら、ふと「左」や「右」はそもそも辞書でどのように定義されているのだろう?ということが気になったので、手持ちの辞書で調べてみることにしました。

 

国語辞典における「左」の定義とは?

大抵の辞書では「左」と「右」の語義は対称になっているので、今回は「左」の語義を見ていくことにします。

南を向いた時、東にあたる方。

『広辞苑』

左右の定義は、方位を用いたものがもっとも一般的。

南極点に立っているときはどうするのか?などと重箱の隅を突くようなことは止めておきましょう。

東に向いたとき北にあたる方。大部分の人が、食事のとき茶碗を持つ側。

『大辞泉』

茶碗を持つ側というのは、おもしろい定義ですね。

これに習えば、文字を書くときペンを持たない側とか、野球をするときグローブをする側とか、ギターを弾くときコードを押さえる側とか、いくらでもバリエーションを作ることができそうです。

アナログ時計の文字盤に向かった時に、七時から十一時までの表示のある側。

『新明解国語辞典』

こちらは時計の文字盤を使った定義。さきほどの茶碗と異なり、万国共通なのが強みでしょう。

 

英語辞典における「左」の定義とは?

続いて英語辞典(英英辞典)の定義を見てみます。

on the side of your body which is towards the west when you are facing north

(北を向いたとき、西側にある体の側)

『Oxford Advanced Learner’s Dictionary』

こちらも広辞苑などと同じく方位を用いています。

この後、いくつかの辞典を当たってみたところ、大半の辞典が方位を用いた定義を採用していました。そのため語義の表現も似たり寄ったりであまり面白くありません。

そんな中、目を引いたのがこちらの例。

(in or toward) a position that is the opposite of right and on the side of your body that contains the heart

(右の反対で、心臓がある体の側)

『Cambridge Dictionary of American English』

心臓を使うという方法がありました。方位を用いない定義としては万国共通でわかりやすいものと言えるでしょう。(実際の心臓は中央寄りにあるそうですが、それはまた別の話ということで)

 

まとめ

いくつかの辞書における「左」の定義をご紹介しました。

これ以外に「左」を定義する方法はあるだろうか?と思い、自分でも考えてみたのですが、どうもぱっとしません。

  • アラビア語で文字を書き進める方向
  • トランプでダイヤのキングが向いている方向
  • スーパーマリオブラザーズにおいてクリボーやノコノコが歩く方向

ある特定の文化によらず、世界中の誰が聞いても納得できるような左右の定義というのは、非常に難しいことなのかもしれません。
 
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