フィンランド語学習記 vol.112 − 目的語の格変化

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フィンランド語教室45週目のレポート後編です。

[前編はこちら]フィンランド語学習記 vol.111 − 存在文のつくり方 | Fragments

存在文に続いて、この日は目的語の格変化について習いました。

例えば「本を読んだ」と言いたいとき、フィンランド語ではどのように表すのでしょうか。

Luin kirjan.(私は本を読んだ。)
*lukea(読む)、kirja(本)
*luin は lukea の一人称過去形

目的語の kirjan は、kirja が格変化した形。

[主格]kirja(本は)
[対格]kirjan(本を)

対格というのは「〜を」を表すフィンランド語の格変化。

でもちょっと待ってください。「〜を」表す格変化といえば、これまでは分格だったはず。

対格と分格の違いとは何でしょう? ここには次のような使い分けのルールがあります。

行為が完了する場合は対格、完了しない場合は分格を用いる。

本の例文に当てはめれば、本を読み終わる場合は対格、読み終わらない場合は分格を用いるということになります。

読み終わらない場合(分格)の文も見てみましょう。

Luin kirjaa.(私は本を読んでいた。)
[主格]kirja(本は)
[分格]kirjaa(本を)

この文の私はあくまで「本を読んでいた」のであって、「本を読み終わった」のではありません。すなわち目的語を分格の形にすることによって、進行形の意味を表しています。

この形はもともと読み終わることを前提としない本を読む際にも適用します。

Luin sanakirjaa.(私は辞書を読んでいた。)
*sanakirja(辞書)

ここでうっかり対格を使って「Luin sanakirjan.」と言ってしまうと、辞書を一冊きちんと読み終わったという意味になるとのこと。(もちろん絶対にあり得ないことではないのですが。)

なおここまでの話はあくまで目的語が数えられる名詞(可算名詞)の場合です。数えられない名詞(不可算名詞)の場合は、行為完了の有無に関わらず分格を使いましょう。

Join kahvia.(私はコーヒーを飲んだ。)
*juoda(飲む)、kahvi(コーヒー)
*join は juoda の一人称過去形

ここでもし対格を使って「Join kahvin.」と言ってしまうと、あらゆるコーヒーを飲み尽くしたという意味になってしまうのでしょうか? 語尾を一文字変えるだけでそんなニュアンスが表現できるのだとしたら、それはそれで面白いことですね。

 

まとめ

フィンランド語の目的語の格を決めるときには、

  • 可算/不可算
  • 全体/部分

という2つの要素を検討して格を決定しなければなりません。

数えられる名詞
(可算名詞)
数えられない名詞
(不可算名詞)
行為が完了(全体) 対格 分格
行為が未完了(部分) 分格 分格

 

これはちょっと大変ですね。

ただしこれは日本語にも英語にもない要素ですし、イメージを膨らませるのはそれなりに楽しい作業だと思いました。せっかく新しい言葉を習うのですから、これまでには思いもよらなかった「世界の切り取り方」に出会ってみたいものです。