フィンランド語学習記 vol.144 − あなたに会いに

Soldiers Executing Improvised Explosive Device Sweep in Iraq

どの言語でも、ちょっとした音の違いで180度意味が変わってしまうことがあります。

例えば、日本語のおばあさんとおばさん、おじいさんとおじさんなど。

おばあさんにおばさんと言ってもあまり問題はないでしょうが、おばさんにおばあさんと言ってしまうと空気がヒンヤリしてしまうかもしれません。

フィンランド語にも、こんな紛らわしい組み合わせがあるようです。

Tapaan sinut.(あなたに会います。)
Tapan sinut.(あなたを殺します。)

[a]が一つ落ちただけで、とんでもないことになってしまいました。

しかしこの二つの動詞、もとの形(辞書形)は全く異なります。

tavata(会う)
tappaa(殺す)

しかし以下のような語形変化を経て、似たもの同士になってしまうのは摩訶不思議。

tavata(会う) tappaa(殺す)
[-ata]で終わる動詞はタイプ4 二つの母音で終わる動詞はタイプ1
タイプ4の動詞は語末の[-t-]を外す タイプ1の動詞は語末の[-a]を外す
tavata → tavaa tappaa → tappa
kpt交替のチェック kpt交替のチェック
タイプ4のkpt交替は左←右(強←弱) タイプ1のkpt交替は左→右(強→弱)
[p←v]の交替あり [pp→p]の交替あり
tapaa ← tavaa tappa → tapa
人称語尾を付ける 人称語尾を付ける
一人称単数の語尾は[-n] 一人称単数の語尾は[-n]
tapaa → tapaan tapa → tapan

 

もちろん言葉には「文脈」というものがあるので、会うと殺すを取り違えることはないでしょう。

しかし「アキに会いに行くんだよ」と言いたいところ、うっかり「アキを殺しに行くんだよ」と言ってしまわないように気を付ける必要はありそうです。怖いですね!