アキ・カウリスマキ監督『白い花びら』@渋谷区総合文化センター大和田

14020301

昨日のエントリーの続き。

ヴィクトル・シェストレム監督『風』@渋谷区総合文化センター大和田 | Fragments

昨日は渋谷区総合文化センター大和田・さくらホールにて、ヴィクトル・シェストレム監督の『風』とアキ・カウリスマキ(Aki Kaurismäki)監督の映画『白い花びら』を見てきました。

『白い花びら』は、1999年に製作された全編モノクロームのサイレント映画。古き良き時代の映画にオマージュを捧げた一作ということになるのでしょう。

カウリスマキはこの映画の制作にあたり、過去の多くのサイレント映画を研究したそうなので、その中には昨日紹介したシェストレム監督の『風』もあったかもしれません。

映画の原題は Juha(ユハ)。これは主人公の名前。

キャベツ作りを生業とする農夫のユハは、フィンランドの片田舎で妻のマルヤとつつましい暮らしを送っています。

新婚で幸せそうな二人。しかしある日、都会からオープンカーに乗った伊達男シュメイッカがやってきて、マルヤは誘惑されてしまい。。。

映画の原作はフィンランドの古典小説で、このカウリスマキ作品以外にも何度か映像化されているのだとか。

どうしようもない人間の弱さを描いた作品で、生きている限り誰にでも起こりうる悲劇を描いています。ユハ、マルヤ、シュメイッカの3人はそれぞれが人間の一種の典型として描かれているのかもしれません。ストーリーはまるで違いますが、なんとなくフェリーニの『道』を思い出しました。

シュメイッカ役のアンドレ・ウィルム(André Wilms)とマルヤ役のカティ・オウティネン(Kati Outinen)は、カウリスマキの近作『ル・アーブルの靴磨き』では仲の良い夫婦を演じているのに、この映画では真逆の関係になっているのがおもしろいですね。

サイレント映画なので、もちろん台詞を含めた音声は一切なし。ただしときどき字幕で状況説明や登場人物の台詞は示されます。

また今回の上映では、ノルウェーのバンド、ハンツヴィル(Huntsville)による生演奏も行われました。

個性的なエレクトロニカサウンド。最初の方は「演奏している」ことを意識して、映画の画面とバンドの様子を交互に見ていたりしたのですが、途中からストーリーに引き込まれてしまい、完全にBGMになっていました。

映画の中盤にハンツヴィルがふっと演奏を止めるところがあって、そこで「あっそうそう、生演奏だったんだ」と思い出したくらい。映画の世界観とすっかり融合して心地よい空間を作り出していたように思います。

サイレント映画+生演奏という組み合わせもいいなあと思った日曜日でした。