ソチとウビフ語(Ubykh)

photo credit: kvitlauk via photopin cc

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2月6日に開幕したソチ・オリンピックも佳境を迎えています。

そんな中、アメリカ・マサチューセッツ州ボストンの日刊紙ボストン・グローブ(Boston Globe)がオリンピックに絡めてロシアの少数言語事情について報じています。

The amazing endangered languages of Russia – Ideas – The Boston Globe

オリンピックの開会式において、ロシアのアナウンサーは、ロシアには180もの民族がおり、それぞれが独自の文化と言語を持っていると誇らしげに語りました。その一方で、ボストン・グローブは次のように指摘します。

What the announcer didn’t mention is that many of those languages are under serious threat. UNESCO’s 2010 Atlas of the World’s Languages in Danger lists more than 130 Russian languages, placing an overwhelming portion of the country’s minority languages at least in the “vulnerable” category. The North Caucasus region near Sochi is a particularly dramatic example both of linguistic diversity—more than 40 languages are still spoken there—and language endangerment. In fact, Ubykh, the language that gave Sochi its name (it derives from an Ubykh word for “seaside”), is now extinct, mostly wiped out when the Russians brutally subdued the region in the 19th century.

(アナウンサーが言及しなかったのは、これらの言語の多くは深刻な脅威にさらされているということだ。ユネスコが2010年に発表した「危機にある言語の世界地図」には、130以上のロシアの言語がリストアップされており、ロシア国内の少数言語のうち圧倒的多数が vulnerable(不安定)というカテゴリーに分類されている。ソチ近郊の北コーカサス地方は、言語多様性(40以上の言語が話されている)と言語消滅危機の両方において特にめざましい例となっている。実際、ソチという名前のもとになったウビフ語(ソチはウビフ語の「海辺」という単語に由来する)は現在消滅している。ロシア人が19世紀にソチ一帯を容赦なく制圧したときにほとんど一掃されてしまったのだ。)

ソチという名前のもとになったウビフ語というのが気になったので、少し調べてみました。

ウビフ語を話していたウビフ人は、もともとソチのあたりに住んでいた民族で、最後の話者が1992年まで生存していたのだとか。

そして驚くべきはウビフ語の音韻体系。

ウビフ語は83の子音を持ち(但し、そのうち3つは借用語にしか現れない)、以前は世界でもっとも多くの子音を持つ言語であると考えられていた。母音は2つしかない。そのほかにも数々の点で特異な言語である。

Wikipedia「ウビフ語」より

83の子音とはすごい!

試しに日本語の子音を数えると[k, s, t, n, h, m, y, r, w, g, z, d, b, p, j]の15+αですので、83というのがいかにすごい数字かわかります。

[注]音素の数というのは、数え方(音素の定義)によって異なります。ウビフ語の83というのは絶対値ではありませんし、日本語の子音も弁別方法によっては20以上になると思われます。

こんなユニークな言語が永遠に失われてしまったというのは、悲しむよりほかありません。