フィンランド語学習記 vol.159 − 人称代名詞の対格
以前のエントリーで、いわゆる英語の I-my-me-mine, you-your-you-yours に当たる人称代名詞の格変化を取り上げました。
フィンランド語学習記 vol.155 − 人称代名詞の分格 | Fragments
その際にのせた表は下記のもの。
主格(〜は) | 属格(〜の) | 分格(〜を) | |
---|---|---|---|
私 | minä | minun | minua |
あなた | sinä | sinun | sinua |
彼/彼女 | hän | hänen | häntä |
私たち | me | meidän | meitä |
あなたたち | te | teidän | teitä |
彼ら/彼女ら | he | heidän | heitä |
ここでは日本語の「〜を」に当たる形として分格を挙げました。
しかし「〜を」に当たる形としては、もう一つ対格もあります。
主格(〜は) | 属格(〜の) | 分格(〜を) | 対格(〜を) | |
---|---|---|---|---|
私 | minä | minun | minua | minut |
あなた | sinä | sinun | sinua | sinut |
彼/彼女 | hän | hänen | häntä | hänet |
私たち | me | meidän | meitä | meidät |
あなたたち | te | teidän | teitä | teidät |
彼ら/彼女ら | he | heidän | heitä | heidät |
分格と対格の違いとは何でしょう?
例えば、同じ「あなたを」でも、フィンランド語では次のような使い分けが必要になります。
[対格]Minä tunnen sinut.(私はあなたを知っています。)
[分格]Minä rakastan sinua.(私はあなたを愛しています。)
[分格]Minä rakastan sinua.(私はあなたを愛しています。)
フィンランド語では一般的に何かの「全体」を表したいときには対格、「一部分」を表したいときには分格を用いるというルールがあります。
しかしそうだとすると、あなたを知っているというときにはあなたの全体を知っているが、愛しているというときにはあなたの全体を愛していない(?)ということになってしまいますね。
このあたりがどうも腑に落ちないので、いろいろ調べていると「フィンランド語文法ハンドブック」に次の記述を見つけました。
「愛する」など感情を表わす動詞の多くは部分目的語をとります。感情は自分の意思で「愛し終わった」と完了させることはできませんので、未完了を表す部分目的語になります。
『フィンランド語文法ハンドブック』P.175
ここで言う部分目的語とは、さきほどの分格(〜を)のこと。
あなたの全体を愛していないから分格を使うのではなく、愛し終わることができないから分格を使うということなのですね。
でも、それなら「愛する」を過去形で使うときはどうなるのだろう?という疑問も生じてきます。
A: 私はあなたを愛し終わりました。
B: <( ̄□ ̄;)>
B: <( ̄□ ̄;)>
ことばに出さない方がよいこともありますか。