フィンランド語学習記 vol.160 − 退屈する男

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フィンランド語教室57週目のレポート。

。。。を書きたいところでしたが、この回は仕事のためお休み。

教科書を自力で読みすすめることにしました。

先生が作成している独習用のウェブサイトを参考にしながら、ひとり読みすすめていきます。

今回読んだ範囲では「退屈する男」のスキットがおもしろかったので、紹介してみたいと思います。

(本当は男女はわからないのですが、勝手に「退屈する男」にしてしまいました。)

男:Minä olen huonolla tuulella.(気分が乗らないなあ。)

女:Niinkö? Miksi?(そう? なんで?)

*huono(悪い)、tuuli(風)、miksi(なぜ)

1行目末尾の tuulella は tuuli が格変化した形。

[主格]tuuli(風)
[接格]tuulella(風の上に)

フィンランド語の接格[-lla/-llä]は「〜の上に」の意味を付け足します。

またよく見ると一語前の huono も huonolla と接格の形に。

フィンランド語には次のようなルールがありました。

ある名詞が格変化すると、その名詞を修飾する形容詞も合わせて格変化する。

よって、この文は次のようになっています。

主格 huono
(悪い)
tuuli
(風)
接格 Minä olen huonolla
(悪いの上に)
tuulella
(風の上に)

 
すなわち、ことばの上では「悪いの上に/風の上に」という形を作らなければなりません。

なお「悪い風の上に」というのは、気分が乗らないという意味の慣用句なのだとか。これはおもしろい表現ですね!

それではスキットの続きを見てみましょう。

男:Minä olen huonolla tuulella.(気分が乗らないなあ。)

女:Niinkö? Miksi?(そう? なんで?)

男:En tiedä. Kaikki on niin tylsää!(知らないよ。すべてが退屈なんだ!)

女:Eikä ole! Minä tiedän monta mukavaa asiaa.(そんなことない! 私は素敵なこともたくさん知っているわ。)

*tietää(知っている)、kaikki(すべて)、tylsä(退屈な)、monta(たくさんの)、mukava(快適な)、asia(もの、こと)

激論になっています。

「退屈な」を意味する tylsä はここでは分格の形に。

[主格]tylsä
[分格]tylsää

Kaikki on (niin) tylsää は、英語のbe動詞の文のように「A=B」の形。

kaikki tylsää
すべてが 退屈な

 
このような「A=B」の文において、フィンランド語には次のようなルールがありました。

主語が一つ、二つと数えられるときには、補語に当たる形容詞は主格。数えられないときには分格。

次の二つの文を比べてみてください。

Tämä kissa on musta.(この猫は黒い。)

Kahvi on mustaa(コーヒーは黒い。)

*kissa(猫)、musta(黒い)、kahvi(コーヒー)

上の文の musta が、下の文では mustaa になっています。

[主格]musta
[分格]mustaa

主格の方は「ムスタ」、分格の方は「ムスター」と伸ばして発音します。

さらにスキットの続きを見てみましょう。

男:Minä olen huonolla tuulella.(気分が乗らないなあ。)

女:Niinkö? Miksi?(そう? なんで?)

男:En tiedä. Kaikki on niin tylsää!(知らないよ。すべてが退屈なんだ!)

女:Eikä ole! Minä tiedän monta mukavaa asiaa.(そんなことない! 私は素敵なこともたくさん知っているわ。)

男:No mikä esimerkiksi ei ole tylsää?(じゃあ、例えば何が退屈じゃないって言うの?)

女:Musiikki. Millaisesta musiikista sinä pidät?(音楽よ。あなたはどんな音楽が好きなの?)

no(じゃあ)、mikä(何が)、esimerkiksi(例えば)、musiikki(音楽)、millainen(どんな)、pitää(好き)

冒頭の no は「じゃあ」くらいの意味。「いいえ」ではありません!

二行目の musiikki は「音楽」の意味。しかし二つ目の文では musiikista という形になっています。

[主格]musiikki(音楽は)
[出格]musiikista(音楽から)

なぜ出格の形になっているのでしょう? そこで次のルール。

「好き」を意味する動詞 pitää は出格の目的語を従える。

目的語というとよく使われるのは分格の形。しかしここでは出格の形に。無理に訳せば、次のような感じに。

× 分格 Pidän sinua. あなたを好きです。
出格 Pidän sinusta. あなたから好きです。

 
もちろんこんな日本語はありませんが、ことばの上では「あなたから」という形を作らなければなりません。

なおさきほどの文では、millainen musiikki(どんな音楽)の部分が pitää の目的語になることによって、出格の形に変化しています。

主格 Millainen
(どんな)
musiikki
(音楽)
出格 Millaisesta
(どんなから)
musiikista
(音楽から)
sinä pidät?

 
それではスキットの最後を見てみましょう。

男:Minä olen huonolla tuulella.(気分が乗らないなあ。)

女:Niinkö? Miksi?(そう? なんで?)

男:En tiedä. Kaikki on niin tylsää!(知らないよ。すべてが退屈なんだ!)

女:Eikä ole! Minä tiedän monta mukavaa asiaa.(そんなことない! 私は素敵なこともたくさん知っているわ。)

男:No mikä esimerkiksi ei ole tylsää?(じゃあ、例えば何が退屈じゃないって言うの?)

女:Musiikki. Millaisesta musiikista sinä pidät?(音楽よ。あなたはどんな音楽が好きなの?)

男:Minä en pidä musiikista.(僕は音楽は好きじゃないよ。)

女:No mistä sinä pidät?(じゃあ、あなたは何が好きなの?)

男:En mistään.(何も好きじゃない。)

とうとう告白してしまいました。

ここでもさきほどの文と同じく mikä(何)が出格の形に。

主格 mikä
(何)
出格 No mistä
(何から)
sinä pidät?

 
以上「退屈する男」のお話でした。

この教科書には本当にネガティブな人がよく登場してきます。この人にはいったい何と声をかけたらよいのでしょう?