「あなた」はどこへ?
− I’m great!
you は日常会話の中でもっとも使用頻度の高い英単語の一つ。
テレビや映画の脚本に基づいた2006年のある調査では、使用頻度第1位という結果が出ています。
そんな you をGoogle翻訳で日本語に訳してみると「あなた」と変換されました。
私たちは日常この「you=あなた」を当たり前のように受け入れていますが、本当にこの等式は成り立つのでしょうか?
というのも昨今、日本語の日常会話で「あなた」を使う機会というのは相当に減っています。
例えば、今日一日を振り返って「あなた」という単語を何回発しただろう?と思い返してみてください。
もしかすると一回も発していないということはありませんか?
ここで辞書による「あなた」の定義を見てみましょう。
あなた【貴方】
1 対等または目下の者に対して、丁寧に、または親しみをこめていう。「ーの考えを教えてください」
2 妻が夫に対して、軽い敬意や親しみをこめていう。「ー、今日のお帰りは何時ですか」
[補説]現代語では敬意の程度は低く、学生が先生に、また若者が年配者に対して用いるのは好ましくない。
『デジタル大辞泉』
語義1には「丁寧に、または親しみをこめて」とありますが、「あなたの考えを教えてください」という例文にあまり親しみを感じられないのは私だけでしょうか。
一方、語義2の例文「あなた、今日のお帰りは何時ですか」にはたしかに親しみが感じられます。こんな言い方をする人は減っているようにも思えますが、まだそれなりに有効な用法なのでしょう。
また補説には「学生が先生に、また若者が年配者に対して用いるのは好ましくない」とありますが、それでは友達などに用いることはできるのかと言えば、それも何だか不自然。
結局、現代の日本語において「あなた」の出番というのはずいぶん限られているような気がします。
それでは日本語を外国語として学んでいる人から「それなら、目の前にいる話し相手は何と呼んだらよいのですか?」と聞かれたら、何と答えればよいのでしょう?
。。。
おそらくは名前や役職で呼ぶのでしょうが、その使い分けがまた難しい。
ノンネイティブの人にとっては、日本語の高いハードルの一つなのではないでしょうか。