フィンランド語学習記 vol.197 − 国を出たり、田舎を出たり
フィンランド語で「◯◯から」と言いたいときには、出格[-stA]または離格[-ltA]の形を用います。
[出格]metsästä(森の中から)
[離格]pöydältä(テーブルの上から)
[離格]pöydältä(テーブルの上から)
ある場所の「中から」と言いたいときには出格、「上から」と言いたいときには離格を用いるのが使い分けの基本ルール。
出格 | -stA | 〜の中から |
---|---|---|
離格 | -ltA | 〜の上から |
こんな例文を見れば、それぞれの格のイメージが明確になるのではないでしょうか。
[出格]Kissa tulee pois metsästä.(ネコは森からやってくる。)
[離格]Kissa hyppää pois pöydältä.(ネコはテーブルの上からジャンプする。)
*tulla(来る)、hypätä(ジャンプする)
[離格]Kissa hyppää pois pöydältä.(ネコはテーブルの上からジャンプする。)
*tulla(来る)、hypätä(ジャンプする)
と、ここまでは以前に習った内容。
その後『フィンランド語文法ハンドブック』を読んでいたら、こんな例文に出会いました。
[出格]Hän lähtee maasta.(彼は国から出ていく。)
[離格]Hän lähtee maalta.(彼は田舎から出ていく。)
*lähteä(出発する)、maa(国、田舎)
[離格]Hän lähtee maalta.(彼は田舎から出ていく。)
*lähteä(出発する)、maa(国、田舎)
同じ maa という単語に、上の文では出格[-stA]、下の文では離格[-ltA]の格語尾が付いています。
これによって maa 自体の意味も「国」と「田舎」に変わってしまうのだとか。
国というのは中から飛び出していくイメージ、田舎というのは上をすーっと移動していくイメージなのでしょうか。
この使い分けはわかるようでも、わからないようでもあります。
国を出るときでも、フィンランド湾の上をすーっと移動していくことはありますし、田舎を出るときでも、森の中から飛び出していくことはあるでしょう。
もちろん言葉というのは理屈だけで割り切れるものではないので、どんなに考えてもどこかで「そうなっているから、そうなっている」としか言いようのないレベルに達してしまいます。
それでもこんな風にさまざまなイメージを思い浮かべていると、時には思いがけない発見があるかもしれません。
Juokseva Nipsu
6月 20, 2014 @ 10:52:10
maa の意味による使い分けについて、このブログで私も初めて知りました。
と、いうことは「~へ」「~に」も同じことがいえるのではないかと思い、さっそく辞書を調べてみました。すると、maa の項目の一番最後に
(maaseutu) maalle: to the country, maalla: in the countryとあり、予想通り「田舎」の意味では -lta, -lla, -lleの上部を表す格になっていました。
では、「国」の場合はということで、手持ちの辞書には載ってなかったので、Webxiconを見たら、例文に、
Voi mennä maahan. One can go into the country. (e.g. to Spain)
Hän on maassa. He is in the country. (within the national boundary)とあり、
やはり内部を表す格になってました。
ご指摘の通り、田舎は上、国は中だったのですね。
おもしろいことに気づかせてもらいました。ありがとうございました。
whitebear
6月 23, 2014 @ 20:56:16
Juokseva Nipsuさん
コメントありがとうございます。
外部格[-ltA, llA, -lle]の場合は「田舎」、内部格[-stA, -ssA, -Vn]の場合は「国」という意味になるんですね。このような使い分けがあるのはとても不思議。
またそもそも「田舎」と「国」を同じ単語で表すのはなぜだろう?という疑問もあります。
英語でも「田舎」と「国」は同じ country なので、もしかしたら深いところで何かつながりがあるのかもしれません。
もし何かわかったら、また取り上げてみたいと思います。