イギリス国歌「God Save the Queen」の save に三単現の[-s]が付かないのはなぜか?
イギリスの国歌と言えば「God Save the Queen(神よ女王陛下を守り給え)」。
この「God Save the Queen」は、なぜ「God Saves the Queen」ではないのか?というのが今回のテーマ。
たしかに God が主語ならば、三単現の[-s]が付いていないのはおかしいような気もします。
この問題、文法的には二つの面から説明できるようです。
1)仮定法
一つ目の説明は「God Save the Queen」という文は直接法ではなく仮定法であるというもの。
直接法=あることを事実として述べる
仮定法=あることを仮定のこととして述べる
『ロイヤル英文法』より
つまりここでは「神が女王を守ってくれる(直接法)」ではなく「神が女王を守ってくれたら(仮定法)」と言っているのだと。
三単現の[-s]というのは、実は仮定法ではなく直接法であることも示しています。
つまり、より正確には三単現直の[-s]と言うべきなんですね。
2)May の省略
二つ目の説明は「God Save the Queen」という文は文頭の助動詞 May が省略された形であるというもの。
助動詞 may にはいわゆる祈願の may と呼ばれる用法があります。
May you both have long and happy lives!(あなたたち2人が長く幸せに暮らしますように)
『ウィズダム英和辞典 第3版』
助動詞の後に来るのは動詞の原形なので、save に[-s]が付かないのも納得。
以上、今回は「God Save the Queen」の save に三単現の[-s]が付いていない文法的な理由を挙げてみました。
なおセックス・ピストルズ(Sex Pistols)の「God Save the Queen」の歌詞には、We love our Queen, God saves という一節があります。
こちらは[-s]が付いているので「守ってくれる」という意味の直接法になっています。