『ウクライナから愛をこめて』オリガ・ホメンコ著

By Ickis (own work based on File:Coat of arms of Kiev.svg) [Public domain], via Wikimedia Commons

By Ickis (own work based on File:Coat of arms of Kiev.svg) [Public domain], via Wikimedia Commons

考えてみると、ウクライナという国について知っていることはそれほど多くありません。

それでも書店でこの本を見たときに何となく惹かれるものを感じ、購入してみました。

ウクライナから愛をこめて

本書はウクライナの首都キエフ出身で、東京大学に留学していたこともあるという、オリガ・ホメンコさんという方が日本語で書いたエッセイ。(翻訳ではありません!)

ここで描かれるのは、著者が少女時代に出会った市井の人々の記憶。

白血病で亡くなった女の子、戦争で離れ離れになってしまった恋人たち。

繊細な筆致でそれぞれの人生に思いを馳せていきます。

ある女性は、子供の時に訪れた先生の家の食卓に、当時は贅沢だった白パンが並んでいるのを見て、国語の先生になりました。

またある男性は、子供の頃の夢だったパイロットになる夢を叶えられず、出版社に勤めることになりました。

そんな二人が実は。。。という構成も見事。

それから特にいいなあと思ったのは、いつも糊の利いたパリパリの白衣を着ている老医師の話。

「なんでそんな服を着ているんだろう?」 その答えは彼が子供の頃、医師を志すきっかけになったある忘れられない出来事に結びついていました。

そんな一つ一つのエピソードが、どれも魅力的でかけがえのないものに感じられます。

ちょっとありきたりな言い方になってしまうかもしれませんが、あなたの身近にいるどんな人にもその人が辿ってきた歴史があるということを改めて思い出せてくれる素敵なエッセイです。

自分のようにウクライナのことをあまり知らない人にも、ぜひ手に取ってもらえたらと思います。
 

ウクライナから愛をこめて
オリガ ホメンコ
群像社
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