「あげる」と「くれる」の違いとは?

wedding gift

*花子は私にチョコレートをあげた。

外国語として日本語を学んでいる人にとって動詞の「あげる」と「くれる」の使い分けはなかなか難しいようです。

確かにどちらも英語にすると give。

私たちはこの二つをどのように使い分けているのでしょう?

第一感、頭に浮かんだのは、

  • 私に → くれる
  • あなたに → あげる
  • 他人に → あげる

という使い分け。例えば、次の文では原則「あげる」と「くれる」を交換することはできません。

花子は私にチョコレートをくれた。(×あげた)
私はあなたにクッキーをあげた。(×くれた)
あなたは花子にサルミアッキをあげた。(△くれた)

とはいえ、これだけで言い尽くせるなら、日本語学習者もそれほど苦労することはないでしょう。

次に辞書の語義を確認してみました。

あげる

「与える」の丁寧語。「誕生日のお祝いをー」

『新明解国語辞典 第七版』

「あげる」が丁寧語というのは普段意識していませんでした。

たしかに「与える」という動詞は、「子供に絵本を与える」「ネコに餌を与える」のような例を考えると、ずいぶん上から目線な感じがします。

くれる

〔人が自分と対等か下の立場の相手に物を〕与える。「それを僕にくれ/友達が妹にくれた本/欲しいのならくれてやる」

『新明解国語辞典 第七版』

ここで先ほどの第一感を打ち砕く例文が登場。

(友達が妹にくれた本/欲しいのならくれてやる)

これらの例文を検証してみましょう。

 

友達が妹にくれた本

「友達が妹にあげた本」だとその友達の妹が本をもらったイメージになりますし、「友達が妹にくれた本」だと私の妹が本をもらったイメージになります。

動詞を交替することで、妹の所属(?)が変わってしまうというのは面白いですね。

「くれる」という動詞は、原則「○○→私」という方向のときに使いますが、私の代わりに私の身内や親しい人が来たときにも使えるということになります。

 

欲しいのならくれてやる

「欲しいのならあげる」だと普通なのに、「欲しいのならくれてやる」だと途端に喧嘩腰な雰囲気が漂います。

原則「○○→私」 という方向のときに使う「くれる」を逆方向に使うことで、敬意のベクトルも逆方向に転回させているという解釈になるでしょうか。

 

こうしてみると「くれる」というのは単に方向性の問題ではなく、立場の問題でもあることがわかります。

ただ日本語のネイティブならこのあたりの微妙な感覚も理解できると思いますが、ノンネイティブにこれを説明するとなるとかなり難しそう。

やはり冒頭に挙げた、

  • 私へ → くれる
  • あなたへ → あげる
  • 他人へ → あげる

を原理原則として伝えるしかないように思うのですが、もっと上手い説明があるものでしょうか?
 
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