フィンランド語学習記 vol.244 − 過去形の作り方(1)

14102401
まずは次の文をじーっとご覧ください。

Asun Helsingissa.(私はヘルシンキに住んでいます。)
Asuin Tokiossa.(私は東京に住んでいました。)

じーっと見つめていれば、フィンランド語の過去形の印は[i]ということに気付くのではないかと思います。

それでは、次の例はどうでしょう?

Odotan raitiovaunua.(私は路面電車を待っています。)
Odotin junaa.(私は電車を待っていました。)

ここにも過去形の印[i]はありますが、odotan に含まれていた[a]がどこかに消えてしまいました。

このようにフィンランド語では、過去形の印[i]を置いたときに、

  • 直前の母音が消える
  • 直前の母音が変化する

などの特徴があります。

今回はそのパターンを場合分けしながら、見ていきましょう。

分量が多いので、今回のエントリーではまずタイプ1の動詞だけを扱うことにします。

タイプ1 2つの母音で終わる動詞
タイプ2 [dA]で終わる動詞
タイプ3 [lA, nA, rA, stA]で終わる動詞
タイプ4 [AtA, OtA, utA]で終わる動詞
タイプ5 [itA]で終わる動詞
タイプ6 [etA]で終わる動詞

 

1)[i]の前が[u][y][o][ö]のとき

これは一番簡単。

過去形の印[i]の前に[u][y][o][ö]があるときには、それらの母音は変化しません。

puhua(話す)
[現在語幹]puhu
[過去語幹]puhui

現在 過去
minä puhun puhuin
sinä puhut puhuit
hän puhuu puhui
me puhumme puhuimme
te puhutte puhuitte
he puhuvat puhuivat

 
*三人称単数の形に注意!

 

2)[i]の前が[ä][i][e]のとき

過去形の印[i]の前に[ä][i][e]があるときには、それらの母音が消えます。

pitää(持つ、好む)
[現在語幹]pitä
[過去語幹]piti

現在 過去
minä pidän pidin
sinä pidät pidit
hän pitää piti
me pidämme pidimme
te pidätte piditte
he pitävät pitivät

 

もう一例、見ておきましょう。

oppia(習得する)
[現在語幹]oppi
[過去語幹]oppi

[i]を置いて、直前の[i]が消えたら同じ形になりました!

現在 過去
minä opin opin
sinä opit opit
hän oppii oppi
me opimme opimme
te opitte opitte
he oppivat oppivat

 
*三人称単数の形に注意!([i]の本数が違います。)

 

3)[i]の前が[a]のとき

これは一番複雑。

単語の音節の数によって変化が異なります。

 

3ー1)単語が三音節以上

[i]の前にある[a]が消えます。これはさきほどの(2)と同じですね。

rakastaa(愛する)
[現在語幹]rakasta
[過去語幹]rakasti

現在 過去
minä rakastan rakastin
sinä rakastat rakastit
hän rakastaa rakasti
me rakastamme rakastimme
te rakastatte rakastitte
he rakastavat rakastivat

 

3ー2)単語が二音節

単語の最初の母音によって、さらに変化が異なります。

 

3ー2ー1)単語の最初の母音が[u][o]のとき

[i]の前にある[a]が消えます。これはさきほどの(2)や(3ー1)と同じですね。

ottaa(取る)
[現在語幹]otta
[過去語幹]otti

現在 過去
minä otan otin
sinä otat otit
hän ottaa otti
me otamme otimme
te otatte otitte
he ottavat ottivat

 

3ー2ー2)単語の最初の母音が[u][o]以外のとき

[i]の前にある[a]が[o]に変わります。

antaa(与える)
[現在語幹]anta
[過去語幹]antoi(!)

現在 過去
minä annan annoin
sinä annat annoit
hän antaa antoi
me annamme annoimme
te annatte annoitte
he antavat antoivat

 

もう一例、見ておきましょう。

laulaa(歌う)
[現在語幹]laula
[過去語幹]lauloi(!)

現在 過去
minä laulan lauloin
sinä laulat lauloit
hän laulaa lauloi
me laulamme lauloimme
te laulatte lauloitte
he laulavat lauloivat

すなわち、[i]の前にある[a]が[o]に変わる条件というのは、

  • 単語が二音節
  • 単語の最初の母音が[u][o]以外(ほとんどは[a]のよう)

以上の二つを同時に満たすとき、ということになります。

よって[i]の前に[a]があっても、三音節以上だったり、単語の最初の母音が[u][o]のときには、すぐに[a]を落としてしまってもよいでしょう。

 

4)[i]の前の母音が消えて[ti]というつながりができたとき

[i]の前の母音が消えて[ti]というつながりができたときには、それが[si]に変わります。

ここでは tietää(知っている)という動詞の過去語幹を求めてみましょう。

tietää まずは末尾の[a]を外して現在語幹に tietä
tietä 過去形の印[i]を置く tietäi
tietäi さきほどのルール(2)によって[ä]が消える tieti
tieti [ti]というつながりができたので[si]に変化 tiesi

 

tietää(知っている)
[現在語幹]tietä
[過去語幹]tiesi(!)

現在 過去
minä tiedän tiesin
sinä tiedät tiesit
hän tietää tiesi
me tiedämme tiesimme
te tiedätte tiesitte
he tietävät tiesivät

 
*現在形では[t]→[d]の kpt 交替が起こりますが、過去形では[t]が[s]に変化するため、kpt 交替は起こりません。これはラッキー。

以上、今回はタイプ1の動詞の過去形の作り方をまとめてみました。

フィンランド語の動詞の8割はタイプ1ということですので、まずは今回の内容をしっかりと固めていきたいと思います。