フィンランド映画祭2014で『水面を見つめて』を観てきました。

きのうに続いて、フィンランド映画祭2014のレポートです。

フィンランド映画祭

[昨日のエントリー]フィンランド映画祭2014で『コンクリートナイト』を観てきました。 | Fragments

16:30スタートの『コンクリートナイト』が終わり、18:45スタートの『水面を見つめて』が始まるまで少し時間があったので、近くのスターバックスでコーヒーを飲んで休憩。

一旦、頭をからっぽにしてから、次の映画に向かいました。

『水面を見つめて』の会場はさきほどより小さいアートスクリーン。100人くらいのキャパでしょうか。

『コンクリートナイト』の冷たいモノクロームの画面とはうってかわり、『水面を見つめて』は楽しげな家族の風景から始まります。

こちらも映画祭の公式ホームページにのっているあらすじをのせておきます。

水面を見つめて
原題:Tumman veden päällä
英題:Above Dark Waters

本作にも出演している俳優ピーター・フランゼンの同名小説の映画化。物語の舞台は1970年代のラップランドの小さな町。小学校入学直前の少年ペテは、酒を飲むと暴力をふるう義父に怯える生活を送っていた。ペテの母親は、既に離婚経験があり、小さな町の中で夫の暴力を隠そうとする。自身の面目を保つため、子供たちの幸福が危険にさらされるのであった。ペテは祖父母のもとに預けられ、そこで彼の人生は一遍する。祖父母に支えられ、元気を取り戻し、自分自身の目で物事を見る勇気を与えられることになるー。ラップランドを舞台にフィンランドの日常風景を描いたヒューマンドラマ。

映画の主人公はもうすぐ小学生になるペテ、そして妹のスヴィと両親。

どこにでもいるような普通の家族ですが、決して完璧な家族などないように、この家族にも暗い影が。

そしてその影がだんだんと大きくなって。。。

物語の鍵を握るのは、普段は温厚なのに、時に感情を制御できなくなってしまうお父さん。

去年のフィンランド映画祭2013のオープニング作品『旅人は夢を奏でる』で生真面目な主人公を演じていたサムリ・エデルマン(Samuli Edelmann)が、今回は人間のダークサイドを強烈に演じています。

このお父さんと母子の関係を軸に物語は展開します。

しかしそんなストーリーライン以上に印象に残ったのが、主人公ペテの行動とその眼に映る世界。

出来心で友達のコインを盗んだり、包丁でいたずらをしてお母さんに怒られたり。

そんなディテールの一つ一つから、自分の子ども時代を思い出して身につまされてしまうのです。

どうして子どもというのは、あんなに理不尽なことばかりしてしまうのでしょう?

またあれほど家族に怒りをぶつけた父親でさえも、ペテにとっては一方的な畏怖の対象ではありません。

そこにはアンビバレントな感情が渦巻いていて、私たちの安易な共感を撥ね付けるような強い眼差しがあります。

かつて子どもだったことがある人なら誰でも、このペテの姿から思い起こす記憶があるのではないでしょうか?

そんな訳で自分にとって、この『水面を見つめて』は何よりも子どもの映画として記憶されることになりました。

子どもの映画と言えば、

フランソワ・トリュフォー監督の『大人は判ってくれない』とか、

ケン・ローチ監督の『ケス』とか、

ラッセ・ハルストレム監督の『マイライフ・アズ・ア・ドッグ』とか、

これらの映画が好きな人なら、きっとお気に入りの一作になるのではないかと思います。

そして映画の最後にペテが家族の幸せを祈るモノローグが流れる場面では、じんわりと暖かい気持ちになりました。

誰もが幸せになりたいと思っているはずなのに、なぜこんなにも空回りしてしまうのでしょう?

様々な感情と余韻の中で、映画館を後にしました。

もしも一般公開されることがあれば、おすすめの一本です!