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フォスフォレッスセンス

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太宰治の「フォスフォレッスセンス」という短編小説を読みました。

 

 

物語の主人公は夢と現実の世界を行き来する男。

男は夢の中で出会った憧れの女性とこんな会話を交わします。

「あたし、花束を戴いたの。」

「百合でしょう。」

「いいえ。」

そうして私のわからない、フォスフォなんとかいう長ったらしいむずかしい花の名を言った。私は、自分の語学の貧しさを恥かしく思った。

物語の最後、男は雑誌の編集者といっしょにその女性の家を訪ねます。女性は不在でしたが、亡くなったご主人と思われる写真の下に花束が飾られていました。

「綺麗な花だなあ。」

と若い編輯者はその写真の下の机に飾られてある一束の花を見て、そう言った。

「なんて花でしょう。」

と彼にたずねられて、私はすらすらと答えた。

「Phosphorescence」

物語はこの「Phosphorescence」の行でぷつんと終わってしまいます。

突然、アルファベット表記になったこの Phosphorescence というのはいったいどんな花なんだろう?と思って調べてみました。

phosphorescence

  1. 燐光(りんこう)性:光を当てたあと、光を取り去っても発光する性質
  2. 青光り
  3. 燐光:ある物質から光を出させていた刺激を除いてもまだ出ている光

「ランダムハウス英和大辞典 第2版」

調べた限り、この Phosphorescence というのはどうも花の名前ではないよう。

もしかしたらどこかにそういう花があるのかもしれませんが、そんな花は実在しないという方が、この小説には似つかわしいような気もします。

実際はどうなのでしょう?

 
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『ブルックリン・フォリーズ』ポール・オースター著

photo credit: the wood via photopin (license)

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ポール・オースターの『ブルックリン・フォリーズ』という小説を読みました。

心に残るとても素敵な小説だったので、簡単に紹介しておきます。

物語の語り手は59歳で元保険外交員のネイサン・グラス。

妻と別れ、仕事を引退し、肺ガンを患ったネイサンは、生まれ故郷のブルックリンに戻ってきます。

私は静かに死ねる場所を探していた。誰かにブルックリンがいいと言われて、翌朝ウェストチェスターから偵察に出かけていった。ブルックリンに戻るのは五十六年ぶりで、まったく何も覚えていなかった。私が三つのときにわが家はブルックリンを離れたが、私は本能的に、かつて一家で住んでいた界隈に帰っていった。傷ついた犬のように、生まれた場所へと這い戻っていったのだ。

P.3

死に場所を探しにやってきたブルックリンで、ネイサンを待っていたのはさまざまな人との出会いでした。

ネイサンの甥で、かつてはアカデミズムの世界で将来を嘱望されながら今は古書店員として働いているトム・ウッド、

物語の主要な舞台となるブライトマンズ・アティックという古書店を営むハリー・ブライトマン、

トムの姪で、謎めいた雰囲気の少女ルーシー。

『ブルックリン・フォリーズ』はそんな登場人物をめぐる一種の群像劇。

ネイサンがブルックリンに戻ってくることがなければ、決してつながることのなかった人たち、その人間模様がとても魅力的に描かれています。

また社会という規範から思いがけずはみ出してしまった、さまよえる人々を暖かく受け入れてくれるブルックリンという街もこの物語のもう一つの主人公なのかもしれません。

ややありきたりな言い方になってしまいますが、人の温かさ、生きる希望のようなものが、底の方にゆっくりと流れているそんな小説です。

何となく八方塞がりな気持ちになったとき、どうしようもないくらいの絶望に襲われたとき、静かにページをめくって、物語の世界に心を浸せば、いつのまにか思いがけない光が見えているかもしれません。

 

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『声に出して読みづらいロシア人』松樟太郎著

photo credit: dscn0683.big via photopin (license)

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松樟太郎さんの『声に出して読みづらいロシア人』(ミシマ社)という本を読みました。

政治・芸術など、さまざまなジャンルで活躍したロシア人を紹介する本なのですが、その選定基準は基本的に名前の響きが面白いかどうかという一点のみ。

軍人のポチョムキン、元首相のチェルノムィルジン、作曲家のラフマニノフなどの名前の響きを楽しんだり、

ロケットの父と呼ばれたコンスタンチン・エドゥアルドヴィチ・ツィオルコフスキー、チェリストのムスティフラフ・レオポリドヴィチ・ロストロポーヴィチ、作家のミハイル・エヴグラフォヴィチ・サルトゥイコフ=シチェドリンなどの名前の長さにびっくりしたり、

要はロシア人の名前で遊んでしまおうという一冊。

ロシア語には全然詳しくないけど、ロシア人の名前って、何だか怪しげで魅力的な響きがあるよなあと思っていた自分のような人におすすめの一冊。

構成は一人につき見開き2ページで、名前だけではなく、それぞれの人物の略歴も紹介されているため、著名なロシア人の見本市としても楽しむことができます。

これまでにありそうでなかったユニークな切り口の本だと思います。

 

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ある仕事論 −『本屋になりたい』を読む

先日読んだ宇田智子さんの『本屋になりたい:この島の本を売る』という本を紹介したいと思います。

本屋になりたい: この島の本を売る (ちくまプリマー新書)

二年前に観光で石垣島に行ったとき、地元の書店で宇田さんの処女作『那覇の市場で古本屋 ー ひょっこり始めた〈ウララ〉の日々』という本をたまたま購入して読み「これは面白い!」と思って、次の本を楽しみにしていました。

宇田さんは、沖縄・那覇国際通り近くの第一牧志公設市場の前で「市場の古本屋ウララ」という古本屋さんを営んでいる方。

本書では、そんな宇田さんの日常が綴られています。

序章 古本屋、始めました

一章 本を仕入れる

二章 本を売る

三章 古本屋のバックヤード

四章 店番中のひとりごと

五章 町の本を町で売る

普通に考えれば、本書は書店の仕事に興味がある人に読んでもらいたい本ということになるのかもしれません。

しかし読み進めながら思ったのは、これは書店で働く人だけではなく、その他の仕事に携わる人にも当てはまる一種の仕事論になっているということ。

宇田さんは新卒で書店への就職活動をした際、履歴書の志望動機の欄に「何かしたいと思っている人を、本を売ることで応援したい」と書いたそうです。

古書店の仕事というのは、おそらく他の多くの仕事と同じように、地道な作業が大半を占めるのだと思います。

本を仕入れる。重い本を運ぶ。値段を付ける。本をきれいにする。棚に並べる。本を売る。本を送る。そして絶え間ない本棚の整理。etc.

そんな一つ一つの仕事を、無理をする訳でもなく、手を抜く訳でもなく、淡々とこなしていくということ。

しかしそこには一本筋の通った自分なりの思いや哲学が流れているということ。

どんな仕事であっても、そこにきちんと向き合おうとすれば、自分自身のあり方が問われる瞬間があるということ。

本や書店に興味のある人だけではなく「仕事って何だろう?」とか「人はなぜ働くんだろう?」といった根源的な疑問に立ち止まってしまった人にもぜひ読んでほしい一冊です。

 

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『太宰治の辞書』北村薫著

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17年ぶりの再会。北村薫さんの新刊『太宰治の辞書』を読みました。

太宰治の辞書

これはデビュー作の『空飛ぶ馬』から始まった円紫さんシリーズの6作目。

  • 『空飛ぶ馬』
  • 『夜の蝉』
  • 『秋の花』
  • 『六の宮の姫君』
  • 『朝霧』
  • 『太宰治の辞書』

円紫さんシリーズというのは、主人公の女子大生「私」が落語家の春桜亭円紫さんを探偵役に様々な「日常の謎」を解いていく推理小説のシリーズ。

調べてみると、前作の『朝霧』が1998年に出ているので、なんと17年ぶり(!)のシリーズ新刊ということになります。

まさか新刊が出るとは思っていなかったので、最初に書店で見かけたときには本当にびっくりしました。

さっそく購入したものの、一気に読んでしまうのはもったいないので、ゴールデンウィーク休みに一行一行味わいながらゆっくりと読み進めていきました。

懐かしい登場人物と懐かしい世界観。

登場人物たちは、17年のブランクをそのまま反映し、それぞれ年を取っています。フィクションなので、前作のすぐ後を描くこともできたのでしょうが、読んでみるとこれで良かったんだろうと思いました。

本書は「花火」「女生徒」「太宰治の辞書」というタイトルの三つの短編からなっています。内容は4作目の『六の宮の姫君』と同様、芥川龍之介の「舞踏会」、太宰治の「女生徒」といった文学作品を巡るミステリー。

前作まで物語の鍵を握っていた探偵役の円紫さんは、本書では三つ目の短編「太宰治の辞書」にのみ登場し、主人公に一つの謎を与えますが、それ以上の役割は与えられていません。成長した主人公の「私」は独力でさまざまな謎に向き合っていきます。

よくある推理小説のように派手な事件は起こりませんが、緻密な構成とディテールにぐいぐいと引き込まれます。

本作を読んでから、北村作品の魅力とは何だろう?と改めて考えていました。

もちろん人によって挙げるポイントは異なると思いますが、自分にとって何よりも魅力的なのは登場人物たちのたたずまい。

本シリーズに限らず、北村作品には一日一日を丁寧に生きている人たちが登場します。そんな彼らの息づかいに触れて、この世界の豊かさ・面白さを再認識できるというのが何よりの北村作品の魅力なのではないでしょうか。

何よりも「本が好きな人」、そして「本が好きな人を好きな人」におすすめの一冊です。

 

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『グレープフルーツ・ジュース』オノ・ヨーコ

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世界中のすべての時計を二秒ずつ早めなさい。

誰にも気づかれないように。

(Make all the clocks in the world fast by two seconds without letting anyone know about it.)

オノ・ヨーコ『グレープフルーツ・ジュース』より

久しぶりに、オノ・ヨーコさんの『グレープフルーツ・ジュース』という詩集を読み返しました。

この詩集の初版はオノ・ヨーコさんが、まだジョン・レノンと出会う前の1964年に出版したもの。

手元にあるのは、その初版を編集し、さまざまな写真家によるモノクロームの写真を添えた1993年の再発版。

冒頭に紹介した一節のように、全てが命令形で書かれたこの詩集はジョン・レノンの「イマジン」のインスピレーションの源となりました。

思い返してみると、最初にこの詩集に出会ったのは高校生の頃。

あの頃、この本を読みながらどんなことを考えていたのか、思い出そうとしてみるものの全く思い出せません。

今、改めて読んでみると、すっと通り過ぎるページとはっと立ち止まるページがあって、そういった感受性というのは年とともに変化しているのだろうと思いました。

はっと立ち止まるページというのは、この世界の新しい見方を教えてくれるものであったり、何か新しいことをやってみようという気持ちを後押ししてくれるものであったり。

いずれにしても、新しい年の初めに読むのにふさわしい一冊なのかなと思います。

立ちつくしなさい。

夕暮れの光の中に。

あなたが透明になってしまうまで。

じゃなければ

あなたが眠りに落ちてしまうまで。

(Stand in the evening light until you become transparent or until you fall asleep.)

 

グレープフルーツ・ジュース (講談社文庫)
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