フォスフォレッスセンス
太宰治の「フォスフォレッスセンス」という短編小説を読みました。
物語の主人公は夢と現実の世界を行き来する男。
男は夢の中で出会った憧れの女性とこんな会話を交わします。
「あたし、花束を戴いたの。」
「百合でしょう。」
「いいえ。」
そうして私のわからない、フォスフォなんとかいう長ったらしいむずかしい花の名を言った。私は、自分の語学の貧しさを恥かしく思った。
物語の最後、男は雑誌の編集者といっしょにその女性の家を訪ねます。女性は不在でしたが、亡くなったご主人と思われる写真の下に花束が飾られていました。
「綺麗な花だなあ。」
と若い編輯者はその写真の下の机に飾られてある一束の花を見て、そう言った。
「なんて花でしょう。」
と彼にたずねられて、私はすらすらと答えた。
「Phosphorescence」
物語はこの「Phosphorescence」の行でぷつんと終わってしまいます。
突然、アルファベット表記になったこの Phosphorescence というのはいったいどんな花なんだろう?と思って調べてみました。
phosphorescence
- 燐光(りんこう)性:光を当てたあと、光を取り去っても発光する性質
- 青光り
- 燐光:ある物質から光を出させていた刺激を除いてもまだ出ている光
「ランダムハウス英和大辞典 第2版」
調べた限り、この Phosphorescence というのはどうも花の名前ではないよう。
もしかしたらどこかにそういう花があるのかもしれませんが、そんな花は実在しないという方が、この小説には似つかわしいような気もします。
実際はどうなのでしょう?
小学館 ランダムハウス英和大辞典
価格: ¥6,000(記事公開時)
カテゴリ: 辞書/辞典/その他, 教育
App Storeで詳細を見る