クロノスとカイロス
例えば、上映時間が二時間の映画を見るとします。
「次はどうなるのだろう?」とストーリーに夢中になって、ハラハラドキドキしながら映画を見終えたとき、
あるいはドラマに入り込めずに、早く終わらないかなあと思いながら、やっとのことで映画を見終えたとき、
それぞれの二時間は同じ二時間と言えるのでしょうか?
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これらはクロノス的には同じ時間、カイロス的には異なる時間と言うことができるでしょう。
クロノス(χρόνος)とカイロス(καιρός)というのは、どちらも「時間」を意味するギリシア語。
クロノス的な時間というのは、日本語の「時刻」に当たり、60秒=1分、60分=1時間、24時間=1日という客観的な時間の流れを表します。
一方、カイロス的な時間というのは「より主観的な時間」であり、そこではさきほどの映画の例のように、それぞれの人間が個別の時間を経験していると考えられています。
人類が誕生し、狩猟採集社会を形成し、農耕社会・工業社会を経て、現代の情報化社会へ。そんな文明の発達とともに失われたものの一つは、クロノス的な時間だったのかもしれません。
何かに夢中になって時を忘れたり、一瞬の喜びをどこまでも深く味わったり。
そんな贅沢な時間の使い方を少しだけでも取り戻すことが、現代社会をよりよく生きるための一つの方途なのだと思います。