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フィンランド語

Sisu − a Finnish concept

Matador Network というウェブサイトの「10 foreign words we just can’t translate(翻訳できない10の外国の言葉)という記事で、フィンランド語の sisu が取り上げられています。

Sisu

This is a Finnish word which can be approximated with the words “fortitude,” or “grit,” or “perseverance,” or “resolve to overcome obstacles.” It’s another famously untranslatable word that Finns claim to be at some centre of the Finnish national identity.

これは「不屈の精神」「気骨」「忍耐」「障害を克服する決意」などの言葉に似たフィンランド語の単語である。それはまた翻訳不可能な単語として知られており、フィンランドのナショナル・アイデンティティの中心にあるものだとフィンランド人は主張する。

sisu という言葉はフィンランド語教室に通い始めた頃に、先生が持ってきてくれたお菓子の名前でもあります。

sisu を手元の辞書で引いてみると、訳語は次のようになっていました。

  • 勇気、度胸、勇敢、大胆、忍耐、頑強、意地、根性

これだけの訳語があるところを見ると、これらのどの概念とも重なるものの、一方ではそこからどうしてもはみ出してしまうニュアンスもあるのだろうと想像することができます。

日本語でも「なつかしい」「もったいない」など、翻訳が難しい言葉は多々あります。

こういった untranslatable な言葉というのは、翻訳者泣かせではあるものの、実はその国の文化や本質をもっともよく表す言葉でもあるはずです。

そうだとすれば、その言葉についてときにじっくりと考えてみるのもおもしろいことではないでしょうか。


フィンランド語学習記 vol.52 − 属格について考えているうちに日本語の「の」がすっかりわからなくなってしまった話

photo credit: e-magic via photopin cc

今週より新年度のフィンランド語教室が始まりました。通い始めから数えて、通算21週目のレポートです。

今回はこれまで習った表現を使って、みっちりと会話の練習から。

そんな中で、フィンランド語と日本語の違いに関しておもしろい事例があったので、紹介してみたいと思います。

まずはフィンランド語の属格のつくり方をおさらいしましょう。

maa(国)
maan nimi(国の名前)

名詞の末尾に[-n]を付けると「〜の」の意味になります。

以前のエントリーでは、この属格が日本語の格助詞「の」に当たると書いたのですが、どうもそう単純な話ではないということが今回の授業で判明しました。

そのときのエントリーはこちら。

[参考]フィンランド語学習記 vol.38 − 属格のつくり方 | Fragments

属格には単に[-n]を付けるだけではなく、特別な変化をする語もあります。ここでは以下の変化のみ押さえておいてください。

[主格]suomalainen(フィンランド人)
[属格]suomalaisen
*[-nen]で終わる単語は語尾が[-sen]に変化します。

それでは「フィンランド人の名前」と言いたいときは、どのような形になるでしょうか。

suomalainen nimi(フィンランド人の名前)

あれ? さきほど属格は suomalaisen になるって言いましたよね?

ここですっかりわからなくなってしまったので、先生に聞いてみるとこんなコメントが。

「日本語では、フィンランド人名前って言うけど、なんでそこで『の』を使うのかわからない。『の』はいらなくない?」

??

その後、様々な例を検証してようやく事の真相がわかってきました。もう一度、上記の例を並べてみましょう。

[属格]maan nimi(国の名前)
[主格]*maa nimi
[主格]suomalainen nimi(フィンランド人の名前)
[属格]*suomalaisen nimi
*は文法的に誤り

maa は名詞なので、nimi を修飾する時は属格 maan の形になります。一方、suomalainen は形容詞として使われているので、そのままの形で nimi を修飾することができます。

ここでは suomalainen を英語の Finnish と同じ役割をする単語として考えてもらうとわかりやすいと思います。すなわち名詞としても形容詞としても使えるということなのですね。

しかしそうだとすると属格の suomalaisen という形はいったいどのようなときに使われるのでしょうか?

わかりやすくするため段階的に単語を組み立ててみます。

名詞 opiskelija 生徒
名詞+名詞 opiskelijan nimi 生徒の名前
形容詞+名詞 suomalainen opiskelija フィンランド人の生徒
形容詞+名詞+名詞 suomalaisen opiskelijan nimi フィンランド人の生徒の名前

 
4の例で、suomalaisen が修飾する語は nimi ではなく直後の opiskelijan です。

その opiskelijan は nimi を修飾するため属格[-n]の形になっているので、それに合わせて suomalainen も属格[-sen]の形になるという次第。

フィンランド語では、形容詞はそれが修飾する名詞と同じ格になるというルールがあります。

ここまで見ていくとフィンランド語の考え方がよくわかりました。

そして明らかになったのは日本語の格助詞「の」とフィンランド語の属格[-n]は決してイコールではないということ。

もちろん重なり合っている部分もあるのでしょうが、重ならない部分もあるということです。

クラスメイトが指摘していたのですが、日本語で「フィンランド人の生徒」と言うときには必ず「の」を挟みますが、「フィンランド人留学生」のように「の」を挟まなくても成立する組み合わせもあるのです。

だとすると、先生の「なんでそこで『の』を使うのかわからない」というコメントも腑に落ちますし、フィンランド語の属格の考え方を理解したことと引き換えに、日本語の「の」が理解できなくなってしまいました。

文法は本当に奥深いです。もっとも理解しなくても使えてしまうのが母語のよいところなのではありますが。


フィンランド語学習記 vol.51 − 国の名前

フィンランド語で世界の国の名前をどのように呼ぶのか簡単に紹介してみたいと思います。

まずはフィンランドに近い国々から見てみましょう。

フィン
Suomi Finland フィンランド
Ruotsi Sweden スウェーデン
Norja Norway ノルウェー
Tanska Denmark デンマーク
Islanti Iceland アイスランド
Venäjä Russia ロシア
Viro Estonia エストニア

 
歴史的・地理的にフィンランドと関わりが深い国には、他言語からの借用ではなく、フィンランド語風の名前が付いているそうです。

実際、Ruotsi, Tanska, Venäjä, Viro などは初めて聞いたら、どこの国なのか全くわかりませんね。

続いて他のヨーロッパの国々。

フィン
Yhdistynyt Kuningaskunta UK イギリス
Ranska France フランス
Saksa Germany ドイツ
Espanja Spain スペイン
Italia Italy イタリア

 
イギリスの綴りが何だか大変なことになっているので、辞書を引いて構成要素を調べてみました。

yhdistynyt(統合した)
*yhdistyä(統合する)の過去分詞
kuningas(王)
kunta(自治体)

おそらく UK(United Kingdom)に対応した呼称なのでしょう。なお England に対応するフィンランド語は Englanti です。

ドイツの Saksa は、英語や日本語からの連想が全く働かない名前ですね。

続いてフィンランドから遠く離れてみましょう。

フィン
Yhdysvallat US アメリカ合衆国
Kanada Canada カナダ
Japani Japan 日本
Kiina China 中国
Australia Australia オーストラリア
Uusi-Seelanti New Zealand ニュージーランド

 
アメリカ合衆国の綴りは、さきほどのイギリスと少し似ています。

こちらも調べてみたところ[yhdys-]は「統合、つながり」を表す接頭辞、vallat は「国」を表す単語 valta の複数形という構成要素になっているようです。

こちらは US(United States)に対応した呼称なのでしょう。

また Uusi-Seelanti の uusi は new の意味ですね。

以上、フィンランド語の国の名前をいくつか紹介してみました。

英語や日本語に近い名前と全く異なる名前が混在し、それぞれの国が隣り合っていたりするのがおもしろいところだと思います。


フィンランド語が簡単だと思える4つの理由

先日、あるコラムを読んでいたら、世界一難しい言語の一つとしてフィンランド語が紹介されていました。

これを読んだ率直な感想は「フィンランド語ってそんなに難しいかな?」というもの。

たしかに語形変化は複雑ですが、他の面ではむしろ易しいと感じることもあります。その理由を主に英語との比較においてまとめてみました。

 

冠詞がない

フィンランド語には英語の a, the に当たる冠詞がありません。

日本語のように冠詞をもたない言語を母語とする学習者には、大変ありがたい特徴ですね。

 

音と文字が1対1対応

英語では apple の[a]は「ア」、make の[a]は「エイ」と発音します。また enough や Wednesday のように音と文字が乖離した単語もたくさんあります。

しかしフィンランド語では、音と文字は1対1の対応。[a]はいつでも「ア」と発音するため、ローマ字と同じように読むことができます。これは本当に楽。

 

ストレスの位置が一定

フィンランド語の単語はすべて第一音節にストレス(強勢)があります。

しかし英語では、ストレスの位置が単語によって異なりますし、present のようにストレスの位置によって意味まで変わってしまう単語もありますね。

 

文法性がない

多くのヨーロッパ言語と異なり、名詞に「男性名詞・中性名詞・女性名詞」などの区別がありません。

フランス語やロシア語に取り組んだことがある人なら、このありがたみがわかることと思います。

 

以上、フィンランド語が簡単だと思える4つの理由をまとめてみました。こうしてみると、フィンランド語は日本人にとって決してハードルの高い言語ではないと思います。

きっかけがあったら、ぜひ挑戦してみてください!


フィンランド語学習記 vol.50 − 愛すべき副詞たち

春休みが終わり、来週からまた新年度のフィンランド語教室が始まります。

そこで教科書の内容を始めから総復習してみました。意味を忘れてしまった単語があったら、辞書で調べるのですが、途中から忘れている単語にある共通点があることに気付きました。

それは「副詞」であるということ。例えば、このような単語たちです。

aina いつも
ehkä たぶん
esimerkiksi 例えば
ihan 全く
liian あまりにも
molemmat 両方とも
siis つまり
sitten それでは
tavallisesti 通常は
tietenkin もちろん
usein しばしば
varmasti まちがいなく

 
名詞や動詞は意味がわからないと文全体の理解に支障がありますが、副詞は読み飛ばしても何とかなってしまうため、ついつい覚えるのが後回しになってしまいます。

フィンランド語の副詞は名詞・動詞・形容詞と違って全く語形変化しないという学習者孝行な単語だというのに、適当に扱ってしまい大変申し訳ないことをしました。

とはいえ、副詞は似たような意味の単語が多く混乱してしまうこともまた事実。例えばフィン・英辞書を引いてみると、siis の意味は so, then と出てきますし、sitten の意味は then, next と出てきます。

どちらにも then が入っているため、違いが明確にわかりません。おそらく意味の重なる部分と異なる部分があるのでしょう。

いずれにせよ、普段はあまり目立たないこの副詞たち。この機会にもう一度、復習したいと思います。


Supisuomea − フィンランド語初心者向けの動画シリーズ

photo credit: Näystin via photopin cc

今回は Supisuomea というフィンランド語初心者向けの動画を紹介します。

初心者向けとは言っても、子どものためのプログラムではなく、フィンランドへの移住者や国外でこれからフィンランド語を学ぼうという大人向けのプログラムです。

1話30分、全12話のシリーズで、下記ウェブサイトから視聴することができます。

Supisuomea | yle.fi | Arkistoitu

まずは第1話を見てみたのですが、扱っている表現は、フィンランド語教室の入門クラスを終えた程度の、私のような学習者にちょうどよい難易度だと感じました。

前半は知っている表現がほとんどでしたが、後半になるにつれてだんだんと知らない表現が増えてきました。第2話以降はもう少し勉強してから見た方がよいかもしれません。

Youtube にもアップされていましたので、試しに見てみたいという方はこちらからどうぞ。

この第1話では、日常のさまざまなシチュエーションで使われる挨拶や基本表現を扱っています。

内容はNHKの語学番組などでよくあるスキット(役者さんが1〜2分で日常生活の一コマを演じる)をたくさんまとめたような感じでしょうか。

実際のフィンランドの風景やそこに住んでいる人たちの様子を垣間見ることができるので、そういう意味でも楽しめるプログラムになっていると思います。

英語ならともかく、フィンランド語の動画教材は貴重なので、上手に利用していきたいものです。


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