10月 24, 2014
whitebear /
フィンランド語 /
まずは次の文をじーっとご覧ください。
Asun Helsingissa.(私はヘルシンキに住んでいます。)
Asuin Tokiossa.(私は東京に住んでいました。)
じーっと見つめていれば、フィンランド語の過去形の印は[i]ということに気付くのではないかと思います。
それでは、次の例はどうでしょう?
Odotan raitiovaunua.(私は路面電車を待っています。)
Odotin junaa.(私は電車を待っていました。)
ここにも過去形の印[i]はありますが、odotan に含まれていた[a]がどこかに消えてしまいました。
このようにフィンランド語では、過去形の印[i]を置いたときに、
などの特徴があります。
今回はそのパターンを場合分けしながら、見ていきましょう。
分量が多いので、今回のエントリーではまずタイプ1の動詞だけを扱うことにします。
タイプ1
2つの母音で終わる動詞
タイプ2
[dA]で終わる動詞
タイプ3
[lA, nA, rA, stA]で終わる動詞
タイプ4
[AtA, OtA, utA]で終わる動詞
タイプ5
[itA]で終わる動詞
タイプ6
[etA]で終わる動詞
1)[i]の前が[u][y][o][ö]のとき
これは一番簡単。
過去形の印[i]の前に[u][y][o][ö]があるときには、それらの母音は変化しません。
puhua(話す)
[現在語幹]puhu
[過去語幹]puhui
現在
過去
minä
puhun
puhuin
sinä
puhut
puhuit
hän
puhuu
puhui
me
puhumme
puhuimme
te
puhutte
puhuitte
he
puhuvat
puhuivat
*三人称単数の形に注意!
2)[i]の前が[ä][i][e]のとき
過去形の印[i]の前に[ä][i][e]があるときには、それらの母音が消えます。
pitää(持つ、好む)
[現在語幹]pitä
[過去語幹]piti
現在
過去
minä
pidän
pidin
sinä
pidät
pidit
hän
pitää
piti
me
pidämme
pidimme
te
pidätte
piditte
he
pitävät
pitivät
もう一例、見ておきましょう。
oppia(習得する)
[現在語幹]oppi
[過去語幹]oppi
[i]を置いて、直前の[i]が消えたら同じ形になりました!
現在
過去
minä
opin
opin
sinä
opit
opit
hän
oppii
oppi
me
opimme
opimme
te
opitte
opitte
he
oppivat
oppivat
*三人称単数の形に注意!([i]の本数が違います。)
3)[i]の前が[a]のとき
これは一番複雑。
単語の音節の数によって変化が異なります。
3ー1)単語が三音節以上
[i]の前にある[a]が消えます。これはさきほどの(2)と同じですね。
rakastaa(愛する)
[現在語幹]rakasta
[過去語幹]rakasti
現在
過去
minä
rakastan
rakastin
sinä
rakastat
rakastit
hän
rakastaa
rakasti
me
rakastamme
rakastimme
te
rakastatte
rakastitte
he
rakastavat
rakastivat
3ー2)単語が二音節
単語の最初の母音によって、さらに変化が異なります。
3ー2ー1)単語の最初の母音が[u][o]のとき
[i]の前にある[a]が消えます。これはさきほどの(2)や(3ー1)と同じですね。
ottaa(取る)
[現在語幹]otta
[過去語幹]otti
現在
過去
minä
otan
otin
sinä
otat
otit
hän
ottaa
otti
me
otamme
otimme
te
otatte
otitte
he
ottavat
ottivat
3ー2ー2)単語の最初の母音が[u][o]以外のとき
[i]の前にある[a]が[o]に変わります。
antaa(与える)
[現在語幹]anta
[過去語幹]antoi(!)
現在
過去
minä
annan
annoin
sinä
annat
annoit
hän
antaa
antoi
me
annamme
annoimme
te
annatte
annoitte
he
antavat
antoivat
もう一例、見ておきましょう。
laulaa(歌う)
[現在語幹]laula
[過去語幹]lauloi(!)
現在
過去
minä
laulan
lauloin
sinä
laulat
lauloit
hän
laulaa
lauloi
me
laulamme
lauloimme
te
laulatte
lauloitte
he
laulavat
lauloivat
すなわち、[i]の前にある[a]が[o]に変わる条件というのは、
単語が二音節
単語の最初の母音が[u][o]以外(ほとんどは[a]のよう)
以上の二つを同時に満たすとき、ということになります。
よって[i]の前に[a]があっても、三音節以上だったり、単語の最初の母音が[u][o]のときには、すぐに[a]を落としてしまってもよいでしょう。
4)[i]の前の母音が消えて[ti]というつながりができたとき
[i]の前の母音が消えて[ti]というつながりができたときには、それが[si]に変わります。
ここでは tietää(知っている)という動詞の過去語幹を求めてみましょう。
tietää
まずは末尾の[a]を外して現在語幹に
→
tietä
tietä
過去形の印[i]を置く
→
tietäi
tietäi
さきほどのルール(2)によって[ä]が消える
→
tieti
tieti
[ti]というつながりができたので[si]に変化
→
tiesi
tietää(知っている)
[現在語幹]tietä
[過去語幹]tiesi(!)
現在
過去
minä
tiedän
tiesin
sinä
tiedät
tiesit
hän
tietää
tiesi
me
tiedämme
tiesimme
te
tiedätte
tiesitte
he
tietävät
tiesivät
*現在形では[t]→[d]の kpt 交替が起こりますが、過去形では[t]が[s]に変化するため、kpt 交替は起こりません。これはラッキー。
以上、今回はタイプ1の動詞の過去形の作り方をまとめてみました。
フィンランド語の動詞の8割はタイプ1ということですので、まずは今回の内容をしっかりと固めていきたいと思います。