きまめ? なままめ? − コーヒーの「生豆」の読み方
先日、コーヒーの手回し焙煎機と生豆を購入し、初めての自家焙煎に挑戦してみました。
そのあたりの話もおいおい書いてみたいと思いますが、今日のテーマはコーヒーの「生豆」について。
みなさんはこの「生豆」を何と読みますか?
おそらくは「きまめ」派と「なままめ」派に分かれるのではないかと思います。
このうち『三省堂国語辞典』の見出し語になっているのはこちら。
きまめ[生豆](名)
煎る前のコーヒー豆。なままめ。
「三省堂国語辞典 第七版」
語釈の中に「なままめ」という読み方も示されていますが、この「なままめ」は見出し語にはなっていません。
ということは「きまめ」の方が正統な読みということなのでしょうか。
ただコーヒー関係の動画などを見ていると、「きまめ」よりも「なままめ」と発音している人の方がかなり多い印象があります。
そもそも「生」という漢字を「き」と読むケースと「なま」と読むケースはどちらが多いのでしょう?
『三省堂国語辞典』を調べてみると、語頭の「生」を「き」と読ませている見出し語は次の15個。
- きいっぽん[生一本]
- きいと[生糸]
- きぐすり[生薬]
- きざけ[生酒]
- きじ[生地・素地]
- きじょうゆ[生醤油]
- きずし[生寿司]
- きぜわ[生世話]
- きっすい[生粋]
- きなり[生成り]
- きぶどうしゅ[生葡萄酒]
- きまじめ[生真面目]
- きまめ[生豆]
- きむすめ[生娘]
- きもと[生酛]
それに対して「生」を「なま」と読ませている見出し語は次の69個。
- なまあくび[生欠伸]
- なまあげ[生揚げ]
- なまあし[生足]
- なまあせ[生汗]
- なまあたたかい[生暖かい]
- なまいき[生意気]
- なまうた[生歌]
- なまえんそう[生演奏]
- なまおと[生音]
- なまがし[生菓子]
- なまかじり[生齧り]
- なまかわ[生皮]
- なまがわき[生乾き]
- なまき[生木]
- なまきず[生傷]
- なまギター[生ギター]
- なまぐさ[生臭・腥]
- なまぐび[生首]
- なまクリーム[生クリーム]
- なまごえ[生声]
- なまごみ[生ごみ]
- なまゴム[生ゴム]
- なまごろし[生殺し]
- なまコンクリート[生コンクリート]
- なまざかな[生魚]
- なまざけ[生酒]
- なましゅつえん[生出演]
- なましょく[生食]
- なまじろい[生白い]
- なまずし[生寿司]
- なまたまご[生卵]
- なまちゅう[生中]
- なまちゅうけい[生中継]
- なまっちょろい[生っちょろい]
- なまっちろい[生っ白い]
- なまつば[生唾]
- なまづめ[生爪]
- なまテープ[生テープ]
- なまなか[生半]
- なまなましい[生々しい]
- なまなまと[生々と]
- なまにえ[生煮え]
- なまにく[生肉]
- なまぬるい[生温い]
- なまはげ[生剥げ]
- なまばな[生花]
- なまハム[生ハム]
- なまはんか[生半可]
- なまび[生火]
- なまビール[生ビール]
- なまびょうほう[生兵法]
- なまふ[生麩]
- なまフィルム[生フィルム]
- なまへんじ[生返事]
- なまほうそう[生放送]
- なまぼし[生干し・生乾し]
- なまみ[生身]
- なまみず[生水]
- なまめん[生麺]
- なまもの[生物]
- なまやき[生焼き]
- なまやけ[生焼け]
- なまやさい[生野菜]
- なまやさしい[生易しい]
- なまゆで[生茹で]
- なまよい[生酔い]
- なまりぶし[生り節・生利節]
- なまろく[生録]
- なまワクチン[生ワクチン]
数の上では「き」より「なま」の方が圧倒的に多いですね。
それでは食品に限った場合はどうでしょうか。
- きざけ[生酒]
- きじょうゆ[生醤油]
- きずし[生寿司]★
- きぶどうしゅ[生葡萄酒]
- なまがし[生菓子]★
- なまクリーム[生クリーム]★
- なまざかな[生魚]
- なまざけ[生酒]
- なまたまご[生卵]
- なまちゅう[生中]
- なまにく[生肉]
- なまハム[生ハム]
- なまビール[生ビール]
- なまふ[生麩]★
- なまめん[生麺]
- なまやさい[生野菜]
- なまりぶし[生り節・生利節]★
この場合も、やはり「き」より「なま」の方が多いようです。
なおこれらの意味を比較検討すると、「き」は「まぜもののない」という意味で使われているのに対して、「なま」は「煮たり焼いたりしていない」という意味で使われていることがわかります。(★印の単語は例外)
例えば、次のペアが「き」と「なま」の対比を端的に示しています。
きざけ[生酒](名)
まぜもののない、純粋の清酒。生一本の酒。
「三省堂国語辞典 第七版」
なまざけ[生酒](名)
(もろみをしぼっただけの)加熱による殺菌をしない酒。
「三省堂国語辞典 第七版」
この法則に沿って考えれば、生豆というのは煎る前のコーヒー豆という意味なので「きまめ」よりも「なままめ」と読む方が理にかなっているのではないかと思います。いかがでしょう?
三省堂国語辞典 第七版
価格: ¥1,700(記事公開時)
カテゴリ: 辞書/辞典/その他, 教育
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