「群衆」と「群集」の違いとは?
先日「ぐんしゅう」という言葉を漢字に変換しようとした際、「群衆」と「群集」の二つの候補があるということに気が付きました。
両者の違いは何なのでしょう?
さっそく辞書で調べてみました。
ぐんしゅう[群衆](名)
たまたま一か所に居あわせた、大ぜいの人々。
「三省堂国語辞典 第七版」
ぐんしゅう[群集](名・自サ)
大ぜいの人があつまること。また、その人々。
ーしんり[群集心理](名)
〘心〙個人が、群集の中では興奮しやすく、他人の行動にひきずられやすくなる心理。
「三省堂国語辞典 第七版」
三国の語釈でキーワードになりそうなのは群衆の方にある「たまたま」という言葉でしょうか。
このとおりに考えると、火事見物の野次馬は「群衆」であっても、国会議事堂前に集まったデモ隊は「群衆」ではないということになります。
他の辞書はどうでしょう?
ぐんしゅう
一【群集】
㊀ーする(自サ)多くの人・動物が、一か所に集まること。また、その集まり。
㊁群衆。〔古くは「くんじゅ」〕
ーしんり【ー心理】
ふだんは理性の有る行動をする個人が群集の中に置かれると、他人の行動にひきずられて、一人の時には出来ないような過激な事をしやすくなる心理。
二【群衆】
一か所に群がり集まった人びと。
「新明解国語辞典 第七版」
新明解には三国にない「動物」というキーワードが出てきました。
このとおりに考えると、アザラシの群集はあくまでも「群集」であって「群衆」ではないということになります。
ここまでの情報を整理してみましょう。
群衆 | 群集 | |
---|---|---|
三国 | 偶然集まる | ー |
新明解 | 人 | 人・動物 |
全体としては「群衆」よりも「群集」の方が幅広い文脈で使えそうな感じ。
群衆 vs 群集というよりは、一定の条件を満たした群集を群衆と呼んでいる感じでしょうか。
ただ一点気になるのはどちらの辞書も「ぐんしゅうしんり」に「群集心理」という漢字を当てていること。
「群衆心理」という表記は間違いなのでしょうか?
念のため Google 検索でそれぞれのヒット数を調べてみました。
- 群集心理 = 56,000件
- 群衆心理 = 66,600件
?? 辞書に出ていない「群衆心理」の方が多くなってしまいました。
「群衆心理」という学術書もあるようです。
実際の使用においては、そこまで厳密に「ぐんしゅうしんり=群集心理」と決まっている訳ではないのかもしれません。
簡単なように見えて、なかなか奥深い「群衆」と「群集」の使い分けです。
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