ある仕事論 −『本屋になりたい』を読む

先日読んだ宇田智子さんの『本屋になりたい:この島の本を売る』という本を紹介したいと思います。

本屋になりたい: この島の本を売る (ちくまプリマー新書)

二年前に観光で石垣島に行ったとき、地元の書店で宇田さんの処女作『那覇の市場で古本屋 ー ひょっこり始めた〈ウララ〉の日々』という本をたまたま購入して読み「これは面白い!」と思って、次の本を楽しみにしていました。

宇田さんは、沖縄・那覇国際通り近くの第一牧志公設市場の前で「市場の古本屋ウララ」という古本屋さんを営んでいる方。

本書では、そんな宇田さんの日常が綴られています。

序章 古本屋、始めました

一章 本を仕入れる

二章 本を売る

三章 古本屋のバックヤード

四章 店番中のひとりごと

五章 町の本を町で売る

普通に考えれば、本書は書店の仕事に興味がある人に読んでもらいたい本ということになるのかもしれません。

しかし読み進めながら思ったのは、これは書店で働く人だけではなく、その他の仕事に携わる人にも当てはまる一種の仕事論になっているということ。

宇田さんは新卒で書店への就職活動をした際、履歴書の志望動機の欄に「何かしたいと思っている人を、本を売ることで応援したい」と書いたそうです。

古書店の仕事というのは、おそらく他の多くの仕事と同じように、地道な作業が大半を占めるのだと思います。

本を仕入れる。重い本を運ぶ。値段を付ける。本をきれいにする。棚に並べる。本を売る。本を送る。そして絶え間ない本棚の整理。etc.

そんな一つ一つの仕事を、無理をする訳でもなく、手を抜く訳でもなく、淡々とこなしていくということ。

しかしそこには一本筋の通った自分なりの思いや哲学が流れているということ。

どんな仕事であっても、そこにきちんと向き合おうとすれば、自分自身のあり方が問われる瞬間があるということ。

本や書店に興味のある人だけではなく「仕事って何だろう?」とか「人はなぜ働くんだろう?」といった根源的な疑問に立ち止まってしまった人にもぜひ読んでほしい一冊です。

 

本屋になりたい: この島の本を売る (ちくまプリマー新書)
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