Pilish の世界

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あなたの周りに、思わず「それって何の役に立つの?」と聞きたくなるような、風変わりな活動に没頭している人はいませんか?
よく観察すれば、この世界というのは酔狂な人で満ち満ちています。
今回はそんな世界の一端を覗いてみましょう。
次の文は Mike Keith の『Not A Wake』という作品に収録されている散文詩の書き出しです。
Now I fall, a tired suburbian in liquid under the trees,
Drifting alongside forests simmering red in the twilight over Europe.
この詩は円周率(π)の各桁の数字を文中の単語の文字数に対応させるという制約の下で書かれています。
円周率の最初の数字は3なので、本文の一語目は3文字の単語を使います。(=Now)
二番目の数字は1なので、本文の二語目は1文字の単語を使います。(=I)
三番目の数字は4なので、本文の三語目は4文字の単語を使います。(=fall)
どこまで行っても円周率の数字とともに歩む、このようなライティングスタイルは Pilish と呼ばれています。
それにしても、このようなスタイルでいったい何語くらい続けることができるのでしょう?
せいぜい100語くらい?と思われた方もいるかもしれませんが、何とこの作品『Not A Wake』は全部で10,000語もあるのだそう。
この作品が2010年に発表されるまでの記録は『Cadaeic Cadenza』という作品の3,835語だったそうですから、大幅な記録更新です。
(こんな分野で記録を競っている人たちがいるということ自体、驚異的なことですが。。。)
ただどんな記録であれ、破られない記録というものはありません。
円周率の数字がどこまでも続く以上、いつの日かこの10,000語という記録を破る作品も現れることでしょう。