フィンランド語学習記 vol.423 − 高い眼鏡
先日のフィンランド語教室より、印象に残ったトピックを一つ。
まずは次の二つの文を比べてみてください。
Nämä silmälasit ovat kalliit.(この眼鏡は高い。)
Silmälasit ovat kalliita.(眼鏡というものは高い。)
Silmälasit ovat kalliita.(眼鏡というものは高い。)
「眼鏡」を意味する silmälasit は英語の glasses と同じく複数形で使う単語なので、複数主格の形[-t]になっています。
一方「高い」を意味する kallis は上の文では主語に合わせて複数主格の形になっているのに対して、下の文では複数分格の形になっています。
単数主格 | kallis |
---|---|
複数主格 | kalliit |
複数分格 | kalliita |
これまでに習ったルールでは、A olla B の構文において主語が数えられる名詞のときには補語は主格、数えられない名詞のときには補語は分格になるはずでした。
眼鏡は数えられる名詞なので、さきほどの Silmälasit ovat kalliita.(眼鏡というものは高い。)という例文はこのルールでは説明できません。
先生曰く、特定の眼鏡が高いと言いたいときには複数主格、眼鏡一般が高いと言いたいときには複数分格を使うのが自然なのだとか。
改めて考えてみると、冠詞がないフィンランド語においては、silmälasit 単体では特定の眼鏡を指しているのか、眼鏡一般を指しているのかがわかりません。さきほどの例文では nämä という限定詞があったのでわかりやすかったのですが、もし次のようになっていたらどうでしょう?
Silmälasit ovat kalliit.(その眼鏡は高い。)
Silmälasit ovat kalliita.(眼鏡というものは高い。)
Silmälasit ovat kalliita.(眼鏡というものは高い。)
主語の形が同じ以上、補語の形によって silmälasit の示す範囲を判断するしかありません。
冠詞があったらもっとわかりやすいのに、、、
なんて冠詞の必要性を感じたのは、おそらく人生で初めてのことかもしれません。