忘れ物はない?
わすれもの[忘れ物](名)
置き忘れ<たもの/ること>。
「三省堂国語辞典 第七版」
英語で表現するのが難しい日本語の一つに「忘れ物」があります。
和英辞書を引くと出てくるのは a thing left behind, lost property のような表現。
ただ a thing left behind は説明的ですし、lost property は硬いイメージ。どちらも「忘れ物」のような日常使いの単語ではありません。
そもそも何か忘れ物をしたとき、英語なら、
I left my umbrella on the train.
のように言うのが普通でしょう。
とりたてて「忘れ物」という名詞表現は必要ではないはずです。
一方、日本語でも「電車に傘を置き忘れた」と言うことはもちろん可能。ただ「忘れ物をする」という表現も日常的に使われています。
母:忘れ物はない?
先生:◯◯さんは忘れ物が多いですね。
先生:◯◯さんは忘れ物が多いですね。
昔よく言われたセリフを思い出してみると、忘れ物というのは何か特定のものを忘れたときより、一般的・習慣的な話をするときによく使われるのかもしれません。
ただこれも考えてみれば不思議なこと。物を忘れると言えば済むところを、わざわざ忘れ物という名詞を作って、そこに動詞のするを付け加えているということになります。
なぜ、こんなに回りくどいことをするのでしょう?
それはわかりませんが、忘れ物という日本語には忘れ物という単語でしか伝えられない独特のイメージがあるように思います。
もしかしたら、その多くは私たちの子ども時代の記憶と結びついているのかもしれません。
三省堂国語辞典 第七版
価格: ¥1,700(記事公開時)
カテゴリ: 辞書/辞典/その他, 教育
App Storeで詳細を見る