フィンランド語学習記 vol.473 − keritä
今回はフィンランド語の keritä(間に合う)という動詞について。
一見どこにでもある普通の動詞に見えますが、語形変化において二つの注意点があります。
ポイント1)[-itA]で終わるのに[AtA, OtA, utA]タイプの語形変化をする
通常[AtA, OtA, utA]で終わる動詞はタイプ4、[-itA]で終わる動詞はタイプ5に分類されます。
タイプ1 | 2つの母音で終わる動詞 |
---|---|
タイプ2 | [dA]で終わる動詞 |
タイプ3 | [lA, nA, rA, stA]で終わる動詞 |
タイプ4 | [AtA, OtA, utA]で終わる動詞 |
タイプ5 | [itA]で終わる動詞 |
タイプ6 | [etA]で終わる動詞 |
ただ keritä の場合は[-itA]で終わるのに、特例としてタイプ4に分類されるとのこと。
ここでは改めてタイプ4、タイプ5の動詞の基本的な活用を確認しておきましょう。
タイプ4=[AtA, OtA, utA]で終わる動詞
haluta(望む)
[語幹]halua
[語幹]halua
単数 | 複数 | |
---|---|---|
一人称 | haluan | haluamme |
二人称 | haluat | haluatte |
三人称 | haluaa | haluavat |
タイプ4の動詞は語末の[t]を外すことで語幹が得られます。
タイプ5=[itA]で終わる動詞
tarvita(必要とする)
[語幹]tarvitse
[語幹]tarvitse
単数 | 複数 | |
---|---|---|
一人称 | tarvitsen | tarvitsemme |
二人称 | tarvitset | tarvitsette |
三人称 | tarvitsee | tarvitsevat |
タイプ5の動詞は語末の[A]を[se]に変えることで語幹が得られます。
今回の keritä はさきほどの haluta と同じタイプ4に分類されるそうなので、
keritä
→ タイプ4の変化なら語幹は → keriä
→ タイプ5の変化なら語幹は → keritse
→ タイプ4の変化なら語幹は → keriä
→ タイプ5の変化なら語幹は → keritse
語幹は keriä になるのだろう、と思いきや、、、
ポイント2)語幹を求める際に、無から[k]が現れる
まずは keritä の基本的な活用を見てみましょう。
keritä(間に合う)
[語幹] kerkiä
[語幹] kerkiä
単数 | 複数 | |
---|---|---|
一人称 | kerkiän | kerkiämme |
二人称 | kerkiät | kerkiätte |
三人称 | kerkiää | kerkiävat |
この語形変化はタイプ4と同じ。ただし語幹の中に[k]が一つ増えているのに注意が必要。
タイプ4の動詞には kpt 交替において弱形から強形への変化が起こるというルールがありました。
keritä の場合は、下表二番目の[k←×]に該当します。
強形 | ←→ | 弱形 |
---|---|---|
kk | ←→ | k |
k | ←→ | × |
uku | ←→ | uvu |
yky | ←→ | yvy |
nk | ←→ | ng |
lke | ←→ | lje |
rke | ←→ | rje |
hke | ←→ | hje |
pp | ←→ | p |
p | ←→ | v |
mp | ←→ | mm |
tt | ←→ | t |
t | ←→ | d |
nt | ←→ | nn |
lt | ←→ | ll |
rt | ←→ | rr |
まとめ
動詞 keritä の注意点をまとめておきます。
ポイント1)[-itA]で終わるのに[AtA, OtA, utA]タイプの語形変化をする
ポイント2)語幹を求める際に、無から[k]が現れる
ポイント2)語幹を求める際に、無から[k]が現れる
なおフィンランド語教室のテキスト『suomea suomeksi 2』では次のような文の中に keritä が出てきました。
Mutta kerkiänköhän minä ennen neljää?
(でも4時前に間に合うかな?)
(でも4時前に間に合うかな?)
うっかり「kerkiänköhän って何?」なんて思ってしまったら、ここから辞書形の keritä に辿り着くのはかなり大変。
kerkiän という形もそのまま頭に入れておくのがベストでしょう。
5月 27, 2017 @ 14:36:00
Hyvää päivää! はじめまして、いつもブログ見てます。
keritäにはkeretä,kerjetäという異形があるようで、どちらも語幹はkerkeä-となるそう。語形変化はタイプ4のもので逆kpt交替(rj→rk)が起こっています。
またkeritäには「(羊などの)毛を刈る」という意味もあるようですが、こちらの意味で使われるときには語幹がkeritse-となるようです。
「間に合う」という意味のkeritä、昔はタイプ4に属する形だったたものが、形だけ変化して語形変化はタイプ4のまま引き継がれたのかもしれませんね。
5月 28, 2017 @ 23:28:03
Wahoさん
Päivää! 貴重な情報ありがとうございます。
「毛を刈る」の意味の keritä はタイプ5の通常の変化なんですね。あちこち例外が多くてこんがらがってしまいますが、何とか整理して覚えたいと思います!