黒染め

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大阪の高校生が生まれつき茶色い髪の毛を「黒染め」するよう何度も指導され、精神的な苦痛を受けたとして大阪府を相手に訴訟を起こしたというニュースが報じられています。

今回のニュースを聞いたときに、この「黒染め」という言葉が、三省堂国語辞典の編者である飯間浩明さんの著書『辞書には載らなかった 不採用語辞典』に取り上げられていたことを思い出しました。

この本で「黒染め」の用例として紹介されているのは、著者がバスの中で聞いた大学生の会話。彼らは就職活動のために黒染めした友人について話しています。

また本書には、著者が「黒染め」を実際に辞書の見出し語として採用するとしたら、こんな感じになるのではないかという語釈も紹介されています。

いったん脱色したり、別の色に染めたりした髪を、黒に染め直すこと。また、その染料。

この本はあくまで不採用語を紹介する本なので、この黒染めという単語は実際の辞書(三省堂国語辞典)には掲載されていません。

ただこのような意味における黒染めという表現を耳にしたり、使ったりしたことがあるという人は案外多いのではないでしょうか。

私も職場にアルバイトで来ている大学生の子が「黒染めしましたよー」なんて言っているのを聞いたことがあります。

しかし今回の大阪の高校生のニュースにおける「黒染め」は、黒に染め直すという意味ではなく、もともと黒ではないものを黒に染めるという意味で使われています。

よってその意味も含めるならば、

黒以外の髪を黒に染めること。

あるいは、

黒以外の髪を黒に染めること。学校における指導の一環として強制されることもある。

などという語釈を付け加える必要があるのかもしれません。

いずれにせよ、黒染めという言葉がこれほど公の場に登場したことはこれまでなかったように思います。良くも悪くも、これから市民権を得ることになるのでしょうか?

 

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