フィンランド映画祭2017で『ペット安楽死請負人』を観てきました。

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現在六本木で開催中の「フィンランド映画祭 2017」。

フィンランド映画祭 2017

二日目の昨日は13:30からの『月の森のカイサ』に続いて16:00より『ペット安楽死請負人』を観ました。ずいぶんと物騒なタイトルの映画ですが、いったいどんな内容なのでしょう?

あらすじは映画祭の公式ホームページより。

ペット安楽死請負人
Armomurhaaja/Euthanizer

今秋トロント国際映画祭でワールドプレミアを行い、第30回東京国際映画祭でも上映される「ワンダフル・ワールド」(Lovemilla フィンランド映画祭2015上映)監督の最新作。フィンランド本国では11月24日に公開される。製作ヤニ・ペセ、監督テーム・ニッキのコンビによる長編映画3作目にあたる本作は前作とは全く異なるジャンルに挑戦している。“痛みには常に理由がある”と語り、ペットの安楽死サービスを副業とするメカニックがペットを虐待する人々を処罰していくというストーリー。アキ・カウリスマキ監督の「浮き雲」「街のあかり」で知られるフィンランドで最も著名な名脇役マッティ・オンニスマーを主役に迎え、テーム監督自ら動物を抱えたダーティーハリーのような作品と語る。70年代カルト映画へスローバックしたノワール映画にして、スタイリッシュなグランジ・ムービー。

本作の主人公ヴェイヨは、フィンランドの小さな町で住人から報酬と引き換えにペットの安楽死を請け負っています。

安楽死という言葉の響きから、映画を観る前は、未来が見えないような重い病気にかかった動物が対象なのだろうと思っていました。

しかし実際には、獣医に連れて行くとお金がかかりすぎる、あるいは単に世話をするのが面倒になってしまった、そんな浅薄な理由でペットを連れてくる人もいます。安楽死云々というよりは単にペットを処分してほしいという人々です。

主人公のヴェイヨはそんな理不尽な依頼を淡々と請け負う、、、のではなく、それらの動物が抱えてきたであろう苦しみをちょっと過激な方法で飼い主に味わってもらったり、一度は処分を請け負った犬を愛情から自分の飼い犬にしてしまったり。どちらかといえば慈悲的なキャラクターとして描かれています。

この段階において、私たち観客は彼の行動を「正しい」ものとして理解しています。

ところが、末期の病で入院している父親との複雑な関係性が明らかになり、物語の後半で彼が暴走し始めるとき、彼の行動は依然として「正しい」ものの、正しい行動というのは現実の社会において必ずしも正しくはないという矛盾に気づき始めます。

スリリングな展開の中に、人間の業と偽善を暴いた一種の哲学的な映画になっているのかなと思いました。

なお映画が終わった後にはプロデューサーのヤニ・ペセさんによるティーチ・インがありました。

その中で印象に残ったのはランボーは映画の中で150人の人を殺しても問題にならないが、一匹の犬を殺したら問題になるだろうという言葉。

そこにある「矛盾」はこの映画のテーマとリンクしています。その理由を上手く言葉にすることはできないのですが、私たちが普段疑いなく信じているこの世界の前提のようなものを強く揺さぶってくる、そんな力のある作品だったと思います。